クリニック名を決める前の商標調査と注意点
現在、クリニックの新規開院を準備中ではありませんか?
そして、その名称を、まさに今お考え中のところではありませんか?
クリニック名は、当然ながら開業前に決めておく必要があります。
ホームページ開設のためにはドメインの取得も必要ですから、ドメイン名を決めるためにも、クリニックの名称は早い段階で考えておくべきでしょう。
実際に名称を考えるにあたっては、地域のルールをはじめ、関連法規や広告ガイドライン等に則って、考案することになるはずです。最近では、ネット検索(SEO)の観点も踏まえた上で名称を考える必要があり、なかなか一筋縄ではいかないでしょう。
このような過程の中で、ぜひとも注意していただきたい点があります。
それは、クリニック名や診療所名は、「商標」になり得るということです。
本ページでは、この「商標」の観点から、先生方がクリニックを開業される前に知っておいていただきたい注意点、特に「商標調査」についてお話しいたします。
なお、文中で特に言及はしておりませんが、歯科の場合も同様となりますので、ぜひご参考にしていただければ幸いです。
1.クリニック名の商標調査に注意すべき理由
上述のように、クリニック名は「商標」になり得ます。
そして、「商標」であれば、「商標登録」をすることができます。
ということは、他院のクリニックの名称が、すでに商標登録されている可能性があるということです。名称を考える際には、この点にも注意することが大切となります。
実際に調べてみたところ、2021年6月初旬現在、医業の分野における「〇〇〇クリニック(CLINIC)」という名称の商標登録は、900件以上あるようです。また、特許庁での審査待ち・審査中で、まだ登録には至っていないものも約200件ありました。
もし、これら1000件近いクリニック名と、同じ名称や似ている名称を付けて開業してしまった場合、「商標権の侵害」が問題となる可能性があります。
商標権を侵害すると、その商標の使用差止や損害賠償を要求されるおそれがあります。
まったく同じ名称の場合だけでなく、似ている場合もNGという点には要注意です。
ですから、クリニック名・診療所名を考える際には、関連法規などのルールに加えて、他院の商標権を侵害していないかという点にも、注意をする必要があるのです。
そこで必要となるのが、「商標調査」なのです。
2.クリニック名を商標調査する方法とは?
お考えのクリニック名が、他院の商標権を侵害することなく、安全に使えることを確認するためには、「商標調査」の実施が必要となります。
具体的には、お考えのクリニック名と同じ名称や似たような名称が、すでに他院によって商標登録されていないかどうかなどをチェック(調査)します。
もちろん、商標調査は、最終的な名称を決める前段階、つまり開院前に実施しなければ意味がありませんので注意が必要です。開業後に問題があることが発覚したら、最悪の場合、クリニック名の変更をしなければならないからです。
もしそうなると、諸々の手続が面倒なばかりか、看板、ホームページ、パンフレットもすべて作り直しになってしまいます。また、ホームページで使うドメイン名も、取り直しをしなければ不自然になってしまう可能性があります。
それでは、商標調査は、実際にどのようにして実施するのでしょうか?
商標調査は、インターネット上にある「特許情報プラットホーム(J-PlatPat)」というデータベースを使って実施することが可能です。このデータベースには、これまでに特許庁で商標登録が認められた商標データなどが収録されています。誰でも無料で利用することができますので、大変便利です。
しかし、残念ながら、専門知識がない状態で、ご自身で商標調査を実施したとしても、問題の存否を適切に判断することは難しいでしょう。たとえば、調査で発見されたクリニック名が同じであることは判断できても、似ているかどうかの判断は、実務に慣れていなければ、かなり困難と言わざるを得ません。
そこでオススメなのが、知財の専門家である「弁理士」へのご依頼です。
弁理士に商標調査を依頼すれば、プロの調査で、そのクリニック名の使用可能性・登録可能性についての見解を得ることができます。この結果次第で、最終的な名称を決定しやすくなるはずです。
弁理士は、一般的に「特許事務所」で働いております。
商標調査のご依頼(ご相談)は、まずは特許事務所にコンタクトしてみてください。
なお、こちらの「弁理士ナビ」から、全国の特許事務所が検索可能です。
ちなみに、医師の先生方にはご理解していただきやすいと思いますが、同じ弁理士であっても、調査能力というのは実はピンキリです。商標調査では、データベースの検索力だけではなく、上述の「似ていると言えるかどうか」などの判断力も大切になるからです。この点、やはり弁理士の専門性や経験・実績というのは、調査の精度に影響を与えると言わざるを得ません。
ですので、クリニック名の商標調査を依頼する場合には、どのような弁理士に依頼するかも大切なポイントとなります。料金の安さなどの要素で安易に依頼先を選んでしまうのはオススメできません。特にネット上には耳障りの良い宣伝広告も溢れておりますので、ご注意ください。
ご参考「商標調査とは?」
ご参考「はじめての特許事務所Q&A」
3.特に注意すべき名称とは?
特に商標調査を注意すべきクリニック名というものはあるのでしょうか?
結論から言うと、特に商標調査に注意する必要があるのは、「造語的な要素」を含んだクリニック名をお考えの場合と言えるでしょう。
その理由を、ご説明いたします。
まず、「誰もが使う必要があり、特定の人に独占させるのが適切ではない文字や図形」といったものは、原則として商標登録が認められないルールになっています。
たとえば、本テーマの場合は、「佐藤クリニック」とか「横浜内科クリニック」などのような名称が、これに該当する例として挙げられるでしょう。
専門的には、これを「自他商品役務の識別力がない」と言ったりしますが、イメージとしては、ありふれた名字、地域名、診療科目名だけを単体または組み合わせてクリニック名に含む、ごくシンプルな名称が該当すると理解しておけば、わかりやすいでしょう。
一部の例外もありますが、こういった構成の名称であれば、登録がされている可能性は基本的に低いと言えます。つまり、他者の商標権を侵害する心配は減りますし、使用上の安全性も高いと言えるでしょう。
一方で、名称に「造語的な要素」を含んでいる場合は、上述のように識別力がないという理由で登録が認められないということはまずありません。たとえば、「紫苑クリニック」とか「アスター内科クリニック」などの名称が、一例として挙げられるでしょうか。
つまり、実際のところ、商標登録がされているクリニック名のほとんどは、このような「造語的な要素」を含んでいるものと言えます。ですから、もし先生が、造語的な要素を含んだ名称をお考えであれば、他院が登録をしていないかどうかを調査することには、特に注意をする必要があるのです。
4.造語的なクリニック名はやめた方が良いのか?
上述のように、造語的な要素を含むクリニック名をお考えの場合には、特に商標調査に注意することが必要であるとご説明いたしました。
一方で、ありふれた名字、地域名、診療科目名だけを単体または組み合わせてその名称中に含む、ごくシンプルなクリニック名であれば、原則的には誰にも登録が認められないことから、使用上の安全性は高いと述べました。
「そうであれば、後者のような名称とした方が、面倒や心配がなくて良いのでは?」
「それなら、商標調査をする手間も省けるのでは?」
もしかすると、このようにお感じになられたかもしれません。
たしかに、使用上のリスクを考える上では、それは一理あるでしょう。
ですが、「商標」の観点から見れば、造語的な名称とするメリットもあると言えます。
たとえば、患者さんにクリニック名を覚えてもらいやすいという点があります。
一度覚えてもらえれば、ネット検索でも見つけてもらいやすくなるでしょう。
思わず口にしたくなるような名称であれば、他の患者さんに紹介してもらえる可能性もあると思います。
また、造語的なクリニック名は、他院との差別化やブランディングも、ありふれた構成からなる名称の場合よりも有利だと言えるでしょう。少なくとも、特徴がない似たような名称のクリニックに比べて、その存在が埋もれてしまうことはないはずです。
もちろん、名称の決定に際しては、商標の観点からの他にも、則るべきルールがあるとは思います。しかし、現在、一般診療所の数は10万件を超えており、毎年約4000~5000件のクリニックが新規開院していると言われています。クリニック経営も事業である以上、こういったマーケティング的な視点も大切と思われますが、いかがでしょうか。
なにより、造語的な名称であれば、商標登録ができるという点もメリットの一つです。
(ぜひ、「お医者さんのための商標登録」もご参照ください。)
造語的な名称とすれば、ドメイン名も取得しやすいというメリットもあるでしょう。
このように、造語的な要素を含んだクリニック名とするかどうかは、そのメリットとデメリットをしっかりと比較した上で、ご検討されるのがよろしいでしょう。
なお、商標調査が必要なのは、造語的な要素を含んだ名称とする場合に限りません。上述のような、ごくシンプルな名称だと一見感じられるものでも、思わぬ名称が登録されている場合もあるからです。ですから、念のため、どのような名称でもチェック(少なくとも、簡易調査程度は)しておくことをオススメいたします。
5.よくあるご質問(Q&A)
商標の話は、事業者である限り関係があります。
その点は、個人経営であっても、医療法人であっても、変わりません。
マーク(シンボルマーク)も商標になり得ます。
ですから、基本的には商標調査をお勧めいたします。
ただし、具体的な態様によって、必要性は変わってきます。
まずは一度、ご相談の上で、当該マークを拝見させていただけばと存じます。
もちろん、お考えになった方が良いでしょう。
登録をしておけば、同じようなクリニック名を他院に付けられるリスクを潰すことが可能となります。ぜひ、ご検討ください。
当事務所がお手伝いできること
当事務所では、商標調査や商標登録のご依頼を弁理士が承っております。
当事務所は、商標専門の特許事務所です。
商標実務15年以上の経験を有する商標専門の代表弁理士が、担当させていただきます。
最終的に商標調査の依頼をするかしないかはともかく、クリニック名をお考えの過程でお悩みの際には、まずは一度、お気軽にご相談いただければと存じます。
「弁理士紹介」
「なぜ商標のことなら当事務所なのか?」
「当事務所の特徴の詳細」
「当事務所のサービスにおける考え方」
当事務所へは、まずは以下のフォームよりご相談・お問い合わせください。
追って弁理士より、Eメールにてご連絡・ご案内を差し上げます。
初回の当事務所からの回答は無料ですので、どうぞお気軽にご連絡ください。
※当事務所へのご相談・お問い合わせは、Eメールのご利用が必須となります。
2023年12月より、「クリニック名のメール相談」サービスを開始いたしました。
本サービスでは、クリニック名の商標調査を含み、その結果を踏まえた「見解報告」を、ご依頼のコースの内容に基づきご提供しております。
現在お考え中のクリニック名の数などに応じて複数のコースをご用意しており、いずれも商標調査を単独でご依頼いただく場合よりリーズナブルな料金となっております。
ぜひ、ご利用をご検討くださいませ。
ご相談・お問い合わせの後で、執拗な営業や売り込みを行なうことはございません。
ご相談に関する料金の発生が予想される場合、必ず事前にお知らせいたします。
ご承諾をいただくまで、着手することはありません。
フォームのご利用により、「突然、請求書が送られてくる」ことは一切ありませんので、どうぞご安心ください。
当事務所では、クリニック名をお考え中の先生を応援いたします!
ぜひ、開業にあたってのお手伝いをさせていただければ幸いです。
こちらもご参考ください
「医業」に関する商標調査などのご依頼であれば、Eメールだけでも完結が可能です。メール事故等がない限り、基本的にお電話はいたしませんので、ご安心ください。
最長で、8営業日~10営業日となっております。
多くの場合は、ご依頼から数日~1週間程度です。
当事務所では、すべて弁理士が調査・報告いたしますので、実際にはご依頼時の弁理士の執務状況などの事情によります。
商標の構成、数、調査報告の方法などによって変動いたします。
まずは一度、ご相談いただき、詳細をお聞かせいただければと存じます。
最適なプランをご提案の上で、お見積もりをお出しいたします。
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