商標登録を弁理士や特許事務所に依頼する理由

「自力」で申請手続を行なうためには、自分で必要となる書類（願書）を作成しなければなりません。複雑な各種手続も、不備なく、うまくやる必要があります。

このような書類作成や手続の遂行のために、やり方を「調べている時間」や、「勉強する時間」はいったいどれくらいかかるでしょうか？

あなたが経営者なら、何よりも重要な資源は「時間」であることを十分に認識しているはずです。商標登録は、弁理士や特許事務所に依頼することで、必要となる時間を大幅に削減することが可能なのです。弁理士が作業をしている間、あなたは別の仕事に着手することができます。

ネット上には、自力で申請手続を行なうための方法が解説されたサイトも存在していますが、あくまで基本的なごく一部の内容にすぎないと考えるべきでしょう。
ノウハウなどの価値ある情報が、無料で公開されているわけはないのです。

ネットの情報に踊らされて、自身で申請手続を行なった結果、的外れな商標権を取得したり、後で思わぬトラブルに巻き込まれたりする可能性も否定できません。
この点、どうか忘れないよう、ご注意ください。

自分で商標登録ができれば、特許事務所に依頼する費用が不要になります。
そうすると、一見うまく費用や予算を節約できたように感じます。

しかし、上述のように、書類作成や手続遂行のために費やした時間をコスト換算すると、いったいいくら程になるでしょうか？

要した時間を費用換算した場合、実は特許事務所の手数料を上回ることも少なくないでしょう。特に、商標登録がはじめてであれば、最初から特許事務所に依頼した方が、ほぼ間違いなくコストを抑えることができると思われます。

たとえば、旧標準料金規定に準じた手数料額を設定している特許事務所では、1区分で約11万円が加えて発生します。これは、人件費を1時間で1万円としても、11時間分にすぎません。初めての申請から登録完了までに必要となる作業を、11時間以内でこなすことは、普通に考えて難しいのではないでしょうか。
やはり、結局はコスト節約になっていないと思われます。

もちろん、長期的に見れば、何度も自分で対応するうちにノウハウが蓄積され、コスト節約が実現できることもあるかもしれません。ですが、後述の「安心感」の観点からも、やはり自力での商標登録はお勧めできません。

商標登録を弁理士や特許事務所に依頼した場合の大きなメリットとは、「安心感」を得られることでしょう。

自分で申請手続を行なった場合、審査結果が出るまでの間、「商標登録が無事に認められるだろうか」、「商標を使い始めても、トラブルにならないだろうか」、などといった心配や不安が、常につきまとうのではないでしょうか。

審査の結果、拒絶理由通知が来れば慌てることになりますし、不意に警告状が送られてくればパニックとなるでしょう。こうなった場合、いずれにしても特許事務所や法律事務所に対応を依頼することになると思いますので、最初から依頼した場合よりも、最終的には時間もコストも多くかかってしまうことが予測されます。

その点、弁理士や特許事務所との付き合いがあれば、あらかじめ、商標の登録可能性や使用可能性についての適切な助言を受けることができますし、トラブルが生じた場合にもすぐに相談することが可能です。

このような「何かあったら助けてくれる相手がいる」という安心感は、簡単には金銭とは比較できない価値があると思いますが、いかがでしょうか。

商標登録を自分自身で行なうか、それとも特許事務所に依頼するかという点は、ざっくり突き詰めれば「お金で安心と時間を買うかどうか」と言えそうです。
「短期的な節約を取るか、長期的な安心を取るか」とも言えるかもしれません。

何事も問題が起こらなければ、自力で行なった方がお得なこともあるでしょう。
しかし、他人の商標権を侵害した場合には、現に数百万円～数千万円の損害賠償金が支払われているケースがあることも、忘れてはなりません。

つまり、いざトラブルに巻き込まれれば、自力による商標登録の結果として節約した額の数倍から数百倍の額を、最終的に支払うことになるリスクも皆無ではないことも、留意すべきポイントです。

もちろん、特許事務所や弁理士に依頼しても、このようなリスクを１００％回避するのは不可能です。しかし、リスクをより低くできるのは間違いないでしょう。

※関連コンテンツ：「Ｑ１－３：市販の書籍や、特許庁のホームページガイドを参考にすれば、
自分でも商標出願の書類作成ができそうですが、わざわざ弁理士に依頼する意味は何ですか？」