商標のコストを節約・削減する方法
事業で経営者が望むことは、「売り上げアップ」と「コストダウン」です。
商標登録などの商標対策に力を入れることは、これらに繋がることもあります。
しかし、それが直ちに効果を発揮するわけではありません。
ですから、コストや予算の面から、商標登録の優先度を低く考えたり、そもそも商標登録はしないと考える経営者の方も少なくありません。
しかし、成功している会社は、必ず商標対策をしていると言えます。
商標登録には多少コストはかかりますが、その費用対効果は決して低くはないのです。
コスト削減のために商標対策をしないのは、誤った経営戦略だと言わざるを得ません。
とはいえ、丁寧に商標対策をすれば、それなりのコストを要するのも事実です。
そこで、本ページでは、商標対策を行なう過程の中でコストを削減しうる方法をいくつかご紹介いたします。また、コストの削減でオススメしない方法にも言及します。
1.商標のコストを削減するための3つの手段
商標対策を行なう上で、費用を節減するためには、大きく分けて以下の3つの手段があると考えられます。
では、具体的に見てみましょう。
(1)商標登録を見直す
特に、商標登録をする指定商品・指定役務を見直します。
コスト削減のために、もっとも手軽に行なえる手段と言えます。
商標登録は、商品や役務(サービス)を指定して行ないます。
ここで指定した範囲で商標権が生じるので、慎重な検討が必要となります。
一般的には、その商標を実際に使う商品・役務や、将来的に使う可能性のある商品・役務を指定します。他方、保護をより強固にする目的や、他人に商標登録を取られないようにする防衛目的で、眼目の商品や役務に関連のある分野の商品・役務についても、戦略的に商標登録の対象に含めることも少なくありません。
また、商標登録の費用は、指定する商品・役務が属する区分の数により増減します。
つまり、商標登録の対象を広げれば広げるほど、コストがかかる仕組みです。
このような事情により、商標をできるだけ広い範囲で保護しようとして、多額のコストがかかっているということはありませんか?
今一度、その商品・役務の区分を本当に含める必要があるのか検討してみて下さい。
不要な商品・役務の区分を切り捨てることで、コスト削減が図れるはずです。
ただし、本当に必要なものまで切り捨ててしまわないよう、注意してください。
たとえば、会社のハウスマークの商標は、必然的に商品・役務がとても広くなります。
これは、一般的には会社の行なう事業分野すべてをカバーする必要があるためです。
指定する商品・役務の要否は、自分で判断するのは難しいかもしれません。
よって、商標登録は、やはり特許事務所にご依頼されることをおすすめいたします。
なお、特許事務所に依頼した場合でも、モラルの低い弁理士が担当になると、何かと理由を付けて、非常に広い範囲での登録を勧めてくる可能性があります。
その方が、弁理士にとっても報酬額が上がるという事情もあるからです。
特許事務所に依頼する場合でも、弁理士の提案を鵜呑みにせず、納得のできない点は、その根拠について明確な説明を求めることをオススメいたします。
もちろん、予算があれば、商標登録の範囲を広げることに越したことはありません。
ただし、商標によっては、登録後3年以降に不使用取消審判が請求されるリスクなどがその分増すことになります。審判が請求されるたびに、対応のためのコストがかかるという点も、忘れてはいけない注意ポイントです。
(2)商標権の更新の要否を見直す
商標権の更新にかかるコストを見直します。
商標権の存続期間は10年間ですが、更新をすることが可能です。
ただし、更新のためには更新登録料を納付する必要があります。
この更新にかかるコストが、会社の予算を圧迫することも少なくないようです。
保有する商標権の更新期限が近付くたびに、機械的に更新手続をしていませんか?
更新前に、その商標権を本当に更新する必要があるのか、すべての区分について商標権を維持する必要があるのかを、しっかり検討することが、コスト節減に繋がります。
たとえば、今、更新期限の近付いている商標権が、20年前とか30年前に商標登録したものということはありませんか。当時は景気もよくて、防衛目的であまり必要性の高くないものまで広く商標登録をしていたかもしれません。
現在、使用もライセンスもしておらず、将来的に使う予定もなく、防衛する必要性も低い商標であれば、無理に更新しなくても良いでしょう。また、更新をする場合でも、明らかに不要と思われる区分については、対象外とすることでコストを削減できます。
ただし、更新をしなかった商標や区分については、その後に第三者が商標登録をしてしまう可能性があるという点には注意が必要です。このようなリスクも踏まえた上で、費用対効果をしっかりと検討する必要があるでしょう。
ところで、平成8年の商標法改正前は、1つの出願には1つの商品・役務の区分しか含めることができませんでした。よって、過去の登録商標は、同じ商標なのに区分ごとに複数存在している場合があります。つまり、更新が必要な商標権の数が多いのです。
現在では、1つの出願に複数の区分を含めることができますので、更新時期が近付いた際には、更新手続は行なわずに、それらを1つにまとめて再度出願・登録をして、新しい商標権を取得するという方法もあります。同じ商標についてバラバラになっていた商標権を、新しく1つに統合するイメージです。
この方法は、ケースによって多少リスクもありますが、うまくいけば商標管理が楽になりますし、長い目で見ればコスト削減にもつながるでしょう。
なお、上述の更新の要否や新出願などの検討は、ご自身では難しいと思います。
やはり、専門家である弁理士に一度ご相談されることをオススメいたします。
(3)商標トラブルを予防する
トラブルが発生すると、追加の庁手続や紛争対応が必要になることがあります。
これらに対応するには、多大なコストがかかることも少なくありません。
基本的なことではありますが、商標トラブルの予防こそがコスト削減に繋がります。
商標登録の深追いに注意!
商標登録出願をしたら、似ている先行商標の存在を理由として、拒絶理由通知が出されることがあります。この場合、これらの商標は似ていないという点を、論理的に反論することで、最終的に登録が認められることも少なくありません。
最近では、拒絶査定不服審判まで争うことで、「さすがに似ているだろう・・・」と思われる商標であっても、登録が認められることも珍しくありません。
ですから、商標登録達成のために、採り得る手段を尽くすことも少なくありません。
そのために、当初に予測していたコストが大幅に膨らんでしまうというのは、実はよくある話です。
そのように頑張った結果、登録が認められればハッピーです。
当事者からすれば、「よく登録できた。やった!」と、その時は思うでしょう。
しかし、このように他人の商標との類似関係が微妙なものを登録した場合、後々にその他人との間で揉め事や紛争が生じるリスクがあることには注意しなければなりません。
なぜなら、似たような商標を登録された第三者は、面白くないのが普通だからです。
なんとかして、その登録商標を潰せないかを考えることになります。
そうすると、その登録を無効や取消にするために、執拗に審判等が請求されるリスクが考えられます。これらの「反撃」に対応するには、それなりのコストを要しますので、長く続くようであればその負担は相当なものになります。
商標登録は、手段であって目的ではないはずです。
商標登録の目的とは、安心・安全な商標の使用を確保することではないでしょうか?
お金をかけて商標登録にこだわることや、長期に渡って登録性を争うというのは、資本力のある大企業だからできるやり方です。基本的に、中小企業や個人事業主が同じことをすべきではありません。
もう後戻りができないという、厳しい状況であればともかく、まだ商標の変更が間に合う状況であれば、このような場合には身を引いて、商標を変更するなどによって将来のリスクを減らすことも、結果としてコスト削減に繋がると思われます。
そして何より、当初より商標登録可能性を見誤らない適切な商標調査が大切です。
使用開始の前に商標登録を!
他者の商標権を侵害してしまうことは、絶対に避けなければなりません。
商標権侵害のトラブルを起こせば、その対応には多大なコストが生じます。
裁判になれば、最終的に勝ったとしても、時間・労力・費用がかかります。
負けてしまった場合には、損害賠償金を支払わなければならないかもしれません。
商標権を侵害しないためには、商標の使用の安全を確保することです。
そのためには、商標登録をしておくことが確実なのは言うまでもありません。
結局のところ、コストを生じ得るトラブルの予防のためにもっとも重要となるのは、やはり使用開始の前に商標登録をしっかりと行なうということになります。
たしかに、商標登録にはそれなりのコストがかかります。
しかし、いざトラブルが生じた場合にかかるコストと比べれば、微々たるものです。
もしもの時の「保険料」と考えれば、予算の無駄という感覚にはならないと思います。
2.注意!オススメしない5つのコスト削減方法
以上が商標対策を行なう上での、考え得るコスト削減の手段です。
一方、オススメできない手段もありますので、注意喚起も兼ねてご紹介いたします。
(2)依頼先を格安特許事務所に変える
(3)自分で対応できることは自分でやる
(4)登録料を分納する
(5)商標見本を無理に1つにまとめる
(1)特許事務所への依頼をやめる
特許事務所に依頼した場合には、やはりそれなりのコストが生じます。
もっとも簡単なコスト削減の方法は、特許事務所への依頼をやめることでしょう。
しかし、社内に商標実務に精通した弁理士がいるなどといった事情がない限り、この手段は本末転倒と言えます。短期的にはコストを減らすことに成功するかもしれませんが、長期的には後々トラブルが生じるリスクが高まってしまうでしょう。
したがって、オススメできる手段ではありません。
ただ、依頼する特許事務所を見直すというのは、検討の余地があるかもしれません。
たとえば、請求回数がやたら多いとか、常識的に考えても料金が高額すぎるとか、現在依頼している特許事務所に納得できない点が多ければ、一考する価値はあります。
(2)依頼先を格安特許事務所に変える
一見、合理的なコスト節減の方法のようにも考えられます。
最近では、インターネットで格安特許事務所も簡単に見つかります。
しかし、あまりにも短絡的すぎるコスト節減手段と言わざるを得ません。
特許事務所が提供するサービスや品質は、決して同じにはなりません。
商標登録を依頼するにしても、担当する弁理士の知識や経験によって、その過程や結果が左右されることも少なくないのです。
したがって、格安特許事務所に依頼した場合には、以前に依頼していた特許事務所と同じレベル、同じサービスは必ずしも期待できないことに留意する必要があります。
なにより、これまでの特許事務所と長年の付き合いがあれば、そこで築いた信頼関係というものは、お金にはかえられない、かけがえのないものです。これを安易な理由で自ら捨て去ってしまうのは、非常に悲しいことではないでしょうか。
前述のように、コスト削減のために現在の特許事務所の変更を検討することは、否定するものではありません。また、格安特許事務所自体も否定はいたしません。
ただ、「料金が安い」という理由だけで、安易に依頼先の特許事務所を決めてしまうことは、オススメできないという話です。
(3)自分で対応できることは自分でやる
もし現在、何でもかんでも特許事務所に依頼しているという状況であれば、依頼内容を見直すことでコスト節減に繋がります。
すなわち、自分でできることは自分で対応して、自分でできないことだけを特許事務所に依頼するという方法です。
たとえば、
商標調査は依頼するが、商標登録出願は自社で行なう。
外国出願は依頼するが、国内出願は自社で行なう。
商標権の更新管理や更新申請は自社で行なう。
などが挙げられるでしょう。
実際に、社内に知財部があるような大きな会社では、このような依頼方法を取ることも少なくないと思います。
ただ、特許事務所側としては、依頼人の情報が多ければ多いほど、より的確なアドバイスができるという面があります。また、たとえば中間処理や審判対応において、関連する案件は部分的でなく全体で依頼を受けている方が適切に対応しやすいという面もあります。なにより、「全部おまかせ」状態の方が、担当弁理士としては依頼人からの強い信頼を感じますし、仕事へのモチベーションも高まるという面もあります。
ですから、部分的に依頼をしたために、情報伝達や意思の疎通がうまくいかず、想定していなかったようなトラブルが生じるリスクというのは否めません。
したがって、トータルするとあまりオススメできる手段ではありません。
この手段をとる場合、自社で対応していることはしっかり特許事務所に伝えるなど、情報共有の手当てなどが必要になるでしょう。
(4)登録料を分納する
商標登録の登録料や、商標権の更新登録料は、10年分を納付するのが原則です。
ただ、これらは5年分を2度に分けて納付(分納)することもできます。
一見すると、分納した方が安く済むようなイメージがあるかもしれません。
しかし、分納すると、トータルの料金としては一括納付した場合よりも割高になる点に留意する必要があります。
また、分納した場合には、後期分の納付手続を忘れないために、期限管理にも気を遣わなければならないという面もあります。
結局は、「絶対に5年以上は商標権が必要ない」、「5年後にはもう商標を使っていることはない」といった事情がない限り、分納するメリットはまったくありません。
特許事務所がホームページで提示する料金表などで、登録料が5年分で見積もられているものをたまに見かけます。依頼人にトータル費用を安く感じさせようという姑息な狙いがあるのかもしれませんが、コスト面での真のメリットとはなりません。
この点、どうぞご注意ください。
(5)商標見本を無理に1つにまとめる
商標登録は、「1つの申請(出願)で1つの商標」が原則です。
ですので、商標登録したい商標が3つあれば、3つの出願が必要となります。
すなわち、費用としても3件分が必要ということになります。
ところで、特許庁の登録例を見ていると、まったく別の複数の商標を1つの商標見本にまとめて、商標登録を受けている例をたまに目にします。たとえば、それぞれに意味や構成の繋がりのない3つの商標を、以下のように3段併記としたような商標です。
VIVID COLORS
紫苑商標特許事務所
ムーンサルト綿菓子
上記は極端な空想事例ですが、これに近いものを見かけることがあります。
こうすると一見、1件の出願で3件分の商標登録ができたかのように思います。
つまり、2件分のコストを節約できたように感じます。
しかし、それは大きな誤解です。
コストが削減できてお得どころか、まったく意味のない商標登録になりかねません。
というのは、商標実務では、これらが全体で1つの商標と判断されるためです。
もちろん、この商標を常に3段併記で使うというのであれば問題ありません。
しかし、このうち「紫苑商標特許事務所」だけ使っていて、「ムーンサルト綿菓子」については使っていないということであれば、不使用取消審判を請求されるとほぼ確実に取消となります。なぜなら、全体として1つの商標とみなされますので、このとおりに使っていなければ「登録商標の使用」とはならないからです。
よく考えれば、そんなに虫のいい話などないことはわかるのですが、コスト節減のために陥りやすい罠とも言えます。十分にご注意ください。
3.ご依頼・お問い合わせ
紫苑商標特許事務所は、商標専門の特許事務所です。
当事務所では、依頼人のコスト感覚を意識したサービスをご提供いたします。
また、商標登録等についてのコスト削減のご相談も承ります。
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