自社の商標が他社に商標出願されているのを発見した
商標登録は、「早い者勝ち」が原則的なルールです。
つまり、その商標を実際に使い始めた順ではなく、特許庁に出願をした順に、商標登録が認められる仕組みです。
ですから、自社の商標について、これまで商標登録を考えてこなかったり、対応をのんびりしていたりすると、いつのまにか他社(他人)が同じ商標を先に出願してしまうというのは、十分にあり得ることです。
もし、このまま他社に商標登録が認められれば、商標権が発生します。
そうすると、その後に貴社がその商標を使い続ければ、「商標権の侵害」となってしまう可能性があります。その結果、貴社商標の使用を中止せざるを得なくなるかもしれません。
商標データベースなどで、自社の商標が他社に商標出願されているのを発見した場合、これを知った経営者の皆様は、大きな不安を感じることかと思います。
では、他社に商標出願をされている場合、どうすれば良いのでしょうか?
なんとか、商標登録を阻止することはできないのでしょうか?
本ページでは、その際に留意すべき点や、対応についてご説明いたします。
※ご注意:本ページに掲載している対応は一般論としての一例であり、
実際には、個別具体的な状況に応じて、適切な対応を検討する必要があります。
あくまでご参考としての情報提供となる点につき、ご了承ください。
1.まずは落ち着き、冷静になることから
2.商品やサービスが共通するかを確認する
3.誰が、いつ商標出願をしたのかを確認する
4.特定の個人・会社による商標出願でないかを確認する
5.情報提供制度の利用を検討する
6.商標の変更や使用の断念も選択肢の一つ
7.弁理士へのご相談・ご依頼のススメ
8.当事務所がお手伝いできること
1.まずは落ち着き、冷静になることから
自社の商標が他社に商標出願されているのを発見した場合、パニックになってしまう経営者の方もおられるかもしれません。しかし、慌ててしまうと正しい行動が取れず、より事態を深刻化してしまうおそれがあります。
まずは落ち着き、冷静に物事を判断できる心身の状態に整えましょう。
発見した他社の商標出願に登録番号(登録〇〇〇〇〇〇〇)が付いていなければ、まだ商標登録が認められたわけではありません。出願番号(商標202〇-〇〇〇〇〇〇)のみが付いているのであれば、まだ出願手続がされただけで「審査待ち」の状態か、すでに審査がされたけれども引っかかっている状態である場合がほとんどです。
今後、最終的には登録拒絶となる可能性もありますし、後述の「情報提供制度」の利用により、商標登録を阻止できる可能性だってあります。絶望するには、まだ早いのです。
早急に対策を考えることは重要ではありますが、このような状態であれば、発見した日に直ちに行動しても、少し落ち着いて翌日から行動しても、そうそう変わるものではありません。
繰り返しますが、まずは落ち着き、冷静になることが大切です。
2.商品やサービスが共通するかを確認する
商標登録は、その「商標」と「商品・サービス」をセットで登録するものです。
この商品やサービスは、商標出願の際に、願書にて指定します。
商標登録がされると、指定した商品・サービスの範囲で、「商標権」が発生します。
また、これらの範囲内で、後からされた他人の商標登録を排除できます。
ということは、商標が同じであったとしても、そもそも商品やサービスが共通していなければ、この他社による商標出願が、貴社商標の使用上または登録上の障害となることは、差し当たりはないと言えることになります(ただし、その他社の商標が非常に有名であるなどの特別な事情がある場合は除きます。)。
よって、まずは、貴社がその商標を使っている商品やサービスが、他社が商標出願で指定している商品・サービスと共通しているか(同一または類似するものであるか)を確認することが重要です。
他社による商標出願の内容については、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」などのデータベースを用いることで確認することができます。
商品やサービスが共通していないことが確認できた場合は、貴社の商品・サービス分野について、貴社が早急に商標出願を済ませるようにしてください。
なお、商品やサービスの共通性(同一または類似するものであるか)を、一般の経営者の方が判断するのは難しいかもしれません。明らかにジャンルが異なっていれば判断可能でしょうが、どの程度までを「共通する」と言えるのか、悩むケースも少なくないでしょう。この点は、商標実務における特有の基準がありますので、専門的な知識が必要となります。
したがって、自社の商標が他社に商標出願されているのを発見した場合は、できれば後述のように、まずは商標の専門家である弁理士にご相談されることをお勧めいたします。
3.誰が、いつ商標出願をしたのかを確認する
もし、商品やサービスが共通するようであれば、その商標出願が誰によるものであり、また、いつ出願されたものであるかを確認することも重要です。
たとえば、出願をした者が、貴社の元従業員や代理店などの関係者・知り合いなのか、それとも、まったく知らない会社や個人なのかという点を確認します。また、商標出願がされた時期が、貴社がその商標を使い始める前なのか、それとも、使い始めた後なのかという点の確認も重要です。
なぜ、このような確認が大切かと言うと、場合によっては、これらの点が後述の情報提供制度を利用する際に、有用な情報の一つとなり得ることもあるからです。
たとえば、出願をした者が、貴社の関係者であり、かつ、商標出願がされた時期が、貴社が商標を使い始めた後であれば、その者は悪意をもって「横取り商標登録」をしようとしているのではないかという点を推測することができます。
なお、出願をした者が知らない会社であっても、元従業員などの関係者が新たに設立した会社ということもあります。インターネット検索をすれば、代表者がわかる場合も多いですので、可能な範囲で追跡調査を行うと良いでしょう。
一方で、出願をした者が、まったく知らない会社や個人であり、かつ、商標出願がされた時期が、貴社がその商標を使い始める前ということであれば、その商標出願は貴社とは関係なく、「偶然」になされたものと推測できます。このような場合、残念ながら、状況としてはかなり厳しいと言えます。
出願をした者(出願人)や出願時期(出願日)の確認は、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」などのデータベースを用いることで確認することができます。もし自力で可能であれば、「経過情報照会」のページも確認すると良いでしょう。現在の審査状況など、現在の出願ステータスの詳細を確認することが可能です。
4.特定の個人・会社による商標出願でないかを確認する
上述の「誰が商標出願をしているのか?」の確認においては、もう一点、留意すべき重要な点があります。
実は、数年前より、「ある特定の個人・会社」が、特許庁に大量の商標出願を繰り返すという状況が続いております。そして、その出願された商標の中には、この個人・会社とは全く関係のない他社の商標も多く含まれていると言われています。
もしかすると、貴社の商標も、これらの出願に含まれている可能性があります。
しかし、この「ある特定の個人・会社」は、なぜか商標出願の手数料を支払わないことから、これらの大量の商標出願のほぼすべてが、最終的には「却下」されているのが実状です。正直なところ、何をしたいのか意味不明なのですが、出願から却下までの間には数か月かかるため、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」などのデータベースには、これらの商標のデータがどうしても含まれてしまうのです。
したがって、もし、自社の商標が他社に商標出願されているのを発見した場合に、出願をしている者が、この「ある特定の個人・会社」であれば、商品やサービスの共通性にかかわらず、最終的にはほぼ100%、出願手続は却下されますので、まず問題はないということになります。つまり、この場合、過度に心配をする必要はまったくありません。
ですから、「誰が商標出願をしているのか?」を確認する際には、これがこの「ある特定の個人・会社」ではないかという点にも、留意するようにしてください。なお、具体的な個人と会社の名称については、本ページでの掲載は差し控えますが、「商標大量出願」などのキーワードでインターネット検索をすれば、すぐにわかるかと思われます。両者は実質的に同一主体です。
もし、この「ある特定の個人・会社」により貴社の商標が商標出願がされていた場合、場合によっては貴社に対して何らかのコンタクトをとってくる可能性も考えられます。このような状況を確認できた場合でも、やはり後述のように、商標の専門家である弁理士に一度ご相談された方がよろしいかと思われます。
5.情報提供制度の利用を検討する
以上を踏まえて、「情報提供制度」の利用ができないかを検討しましょう。
「情報提供」とは、特許庁の審査に活用できる情報を提供する手続です。
一般的には、その出願された商標が商標登録できる要件を満たしていないことを、具体的な理由とともに知らせます。
情報提供で指摘した内容が審査官に認められれば、他社の商標出願を登録拒絶に導き、商標登録を阻止することに繋がります。
したがって、情報提供制度の利用を検討するにあたっては、その他社の商標出願について、商標登録を拒絶されるべき理由がないかを考えることになります。
なお、情報提供は、具体的には「刊行物等提出書」という書面を特許庁に提出します。
手続に手数料はかかりませんし、匿名とすることもできます。
ただし、書面の作成には、少なくとも商標法の知識が必要となります。
また、当たり前ですが、審査結果が確定する前に提出する必要があります。
このように、情報提供は比較的手軽にできるものではありますが、やはり商標法などの専門的な知識がなければ、絵に描いた餅で終わってしまいます。自社の商標が他社に商標出願されているのを発見した場合は、情報提供制度の利用の可否も含め、やはり後述のように商標の専門家である弁理士にご相談されるのが無難でしょう。
6.商標の変更や使用の断念も選択肢の一つ
自社の商標が他社に商標出願されている場合、「早い者勝ち」という原則的なルールの下では、この商標登録を阻止することは基本的には難しいというのが実際のところです。
たとえ、その商標出願が他社の悪意によるものであっても、「今まで商標登録をする機会がいくらでもあったのに、貴社がしなかったのが悪い」というのが特許庁の基本的なスタンスです。厳しいようですが、「自業自得でしょ?」という考え方なのです。
ですから、一見すると不正や悪意が疑われる不適切な商標出願であったとしても、それだけを理由として商標登録を阻止するのは、たとえば貴社との間で明らかに契約違反などの背信行為があるといったように悪質性が高く、かつ、それを客観的に証明できる証拠があるような場合を除いては、まず難しいと言わざるを得ません。前述の情報提供にも、過度に期待するべきではありません。
なお、商標登録が認められてしまった後も、対抗手段がないわけではありませんが、状況が厳しいことは変わりません。しかも、これらの手段には通常、相当の時間・費用・労力がかかりますので、様々な覚悟が必要です。頑張っても頑張っても、不毛な結果となる可能性は決して低くはないという点も、十分に承知しておく必要があります。
自社の商標が他社に商標登録されていることが判明した
ですから、現状として打つ手が考えられない場合や、情報提供ができる有効な理由を見いだせない場合、また、今後一切の不毛な争いを望まないような場合は、残念ではありますが、キッパリと貴社商標の使用を中止して、心機一転、新しい商標に切り替えるというのも、一つの選択肢となります。
なお、その他社の商標出願で指定された商品・サービスが共通しない場合であっても、貴社商標と同じ商標がそもそも市場に存在するという点で、経営戦略上、不都合を感じることもあると思われます。このような場合も、思い切って商標を変更するというのも一策でしょう。
いずれの場合も、商標の変更を決断しましたら、今回痛い目に遭った経験を教訓として、ぜひ新しい商標について商標登録をしてください。また、新しい商標を決める際には、必ず事前に商標調査を実施することを忘れないようにしましょう。
7.弁理士へのご相談・ご依頼のススメ
自社の商標が他社に商標出願されているのを発見した場合、状況としては、かなり厳しいということがおわかりになったかと思います。
差し当たりの対応として、商品・サービスの共通性を検討したり、情報提供制度の利用を検討したりするとしても、商標法などの専門的な知識がなければ、どうにもならないということにもなりかねません。商標の変更を決断した場合も、どの程度まで変えればOKなのか、わからないと悩むことになるかもしれません。
そこで、まずは専門家である「弁理士」にご相談されることをお勧めいたします。
弁理士は、商標を含む知的財産権に関するプロフェッショナルです。
できれば具体的な対応につきましても、弁理士にご依頼されるのが理想的だと思います。
弁理士は、主に日本国内の「特許事務所」で仕事をしております。
こちらのサイトから全国の弁理士を探すこともできますので、ぜひ貴社と相性の良さそうな弁理士をお探しになって、特許事務所にコンタクトしてみてください。
8.当事務所がお手伝いできること
紫苑商標特許事務所では、貴社の商標が他社に商標出願されているのを発見した場合のご相談を、弁理士が承っております。必要に応じて、特許庁への情報提供等についてもご依頼いただけます。
当事務所は、商標専門の特許事務所です。
商標実務15年以上の経験を有する商標専門の代表弁理士が、担当させていただきます。
ご依頼の1件1件にしっかり時間をかけて丁寧に対応することをポリシーの一つとしております。
貴社の商標が他社に商標出願されているのを発見してお困りの場合は、ぜひご相談ください。
当事務所へのご相談・お問い合わせ
当事務所へは、以下のフォームよりご相談・お問い合わせください。
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