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クリニック名が問題・トラブルとなり得るケースの一例

クリニック名がトラブルになり得るケースとは?

当事務所では、クリニック名に関するご相談やお問い合わせをよくお受けします。ただ、正直なところ、クリニック名を「商標」という観点から意識されている医師の先生は、あまり多くはない印象があります

「現在の名称で問題はないはずだ。」
このような認識の先生が、ほとんどと言えます。

おそらくは、保健所や厚生局を通していることなので、まさか問題などないだろうとお考えなのでしょう。また、今はインターネット検索も簡単にできますので、開業前に、似たような名称のクリニックがないかは、事前に自身でちゃんと確認しているということも、あるのかもしれません。

たしかに、一般的な企業等と比較すると、業界的には、そもそも大きな揉め事やトラブルに遭遇する可能性は低いと考えられそうです。

しかし一方で、「商標」という観点からは、クリニック名の使用が問題・トラブルになる得るケースがないとは言い切れません。

本ページでは、この点について、詳しくご説明いたします。




1.見落としやすい「商標登録」の視点

医師の先生方は普段あまり意識していないかもしれませんが、クリニック名は、立派な「商標」になり得るものです。よって、クリニック名の使用にあたっては、商標的なリスクについても、気にしておく必要があります

ここで、クリニック名が「商標」いう観点から問題・トラブルになり得る原因の一つとして、他人の「商標登録」の存在を挙げることができます

商標登録がされた商標と同一・類似の商標を、それと共通する商品・サービスについて使うと、原則として「商標権の侵害」となります。よって、もしも商標登録がされている他人のクリニック名と同一・類似のクリニック名を、共通する「医業」において使った場合には、その他人の商標権を侵害することになってしまうということです。

ただ、この点を知っても、医師の先生方が動揺する様子はあまり見られません。

おそらく、上述のように、ちゃんと保健所や厚生局を通していることや、似たような名称のクリニックがないかは事前に自身でインターネットを用いて確認しているということにより、「現在の名称で問題はないはずだ。」と信じているからだと思われます。

たしかに、実際に後述する「商標調査」を行なってみても、問題・トラブルとなり得るような他人の「クリニック名」の商標登録が見付かることはめったにありません。

しかし、ここで注意しなければならない見落としがちな点があります。
それは、商標的に問題・トラブルとなり得る他人の商標登録は、必ずしも「クリニック名」に関するものに限られないということです。



2.注意すべきはクリニック名の商標登録だけではない

商標的に問題・トラブルとなり得る他人の商標登録が「クリニック名」に関するものだけであれば、たしかにあまり心配はいらないかもしれません。

しかし、実際には、これが必ずしも「クリニック名」に関するものだけに限られないことに注意をする必要があります

商標登録をする際には、願書に、その商標を使う商品・サービスを指定します。ここで指定した範囲で、その商標が保護されることになるわけです。クリニック名の場合は、第44類「医業」をメインに指定することになります。なお、商標登録の実務においては、「医業」はサービスの一種として取り扱われます。

一方、この「医業」と同じグループに分類されたサービスとして、たとえば、「医療情報の提供」、「健康診断」、「歯科医業」、「調剤」などもあります。

ということは、これらのいずれかのサービスを指定して商標登録をした場合に生じる商標権の効力は、これらのいずれかのサービスについて、それと同一・類似の商標を使用する行為に及ぶということになります。

つまり、もし、自身が「医業」で使っているクリニック名が、他人が「医療情報の提供」、「健康診断」、「歯科医業」、「調剤」などを指定して商標登録をした何らかの商標と類似するような場合は、そのクリニック名の使用が、それらの「商標権の侵害」になり得るということになります。

これは、クリニック名が商標的に問題・トラブルとなり得る場合の相手方は、必ずしも医師に限られないことも意味します。「医療情報の提供」を行なう企業、「歯科医業」を行なう歯科医師、「調剤」を行なう薬局などが、相手方となる可能性もあります。

商標的な問題・トラブルがないかを考える場合には、このような視点も忘れてはなりません。



3.クリニック名が問題・トラブルとなり得る一例

では、実際にクリニック名が商標的に問題・トラブルとなり得るケースとして、具体的にはどのようなものが考えられるでしょうか。今回は仮に、自身のクリニック名が「〇〇〇クリニック」だとしましょう。

この時、問題・トラブルとなり得るケースの一例として、他人がすでに「〇〇〇」を、共通するサービス分野において商標登録している場合が挙げられます。

たとえば、「紫苑クリニック」という名前を付けて使っていたら、他人がすでに「医業」のサービス分野で、「紫苑」の商標登録をしていたというケースです。

このような場合、原則的な考え方によれば、両商標は類似する(似ている)と判断される可能性が高いと思料されます。なぜなら、「〇〇〇クリニック」のうち、「クリニック」の文字は医業の分野では識別力が弱い語であるため、要部は「〇〇〇」の部分だと一般的には考えられるからです。その結果、要部である「〇〇〇」と、他人が商標登録をした「〇〇〇」は実質的に同じということになり、商標全体としても類似する(似ている)と判断される可能性が高いと思料されます。

そうすると、この「〇〇〇」を商標登録している他人が、「〇〇〇クリニック」を使用することに対し、「商標権の侵害」を理由として、使用差止請求や損害賠償請求をしてくる可能性も否定はできないというわけです。

当事務所の経験上も、もしもクリニック名について何らかの商標的な問題・トラブルが生じるとすれば、このようなケースが大半なのではないかと思料されます。

なお、相手方としては、上述した企業、歯科医師、薬局などとなることが考えられますが、同業者である医師がこのような商標登録を行なっている可能性もあるでしょう。

このように、たとえ「〇〇〇クリニック」と同一・類似の「クリニック名」に関する他人の商標登録がない場合であっても、「〇〇〇」の部分についての他人の商標登録が存在しているようなケースでは、これが商標的な問題・トラブルの原因となり得る可能性がある点に、注意をする必要があります

もちろん、このような場合には絶対に商標権の侵害になるとか、絶対にトラブルになるというわけではありません。あくまで可能性としての話となります。実際、後述のように、最近の特許庁では「〇〇〇クリニック」と「〇〇〇」の商標を、最終的に非類似(似ていない)と判断する傾向が見られます。しかし、これはあくまで特許庁の考え方であって、必ずしも裁判所が同じように考えるとは限りませんから、楽観すべきではありません。また、侵害の成否よりもまず、そもそもトラブルに巻き込まれないことが大切でしょう。



4.商標権侵害のリスクを回避するためには?

では、商標権の侵害を指摘されるようなリスクを回避するためには、どうすれば良いでしょうか。

まずは、現在お使いのクリニック名について、「商標調査」を行なうのがベストです。
もちろん、これから開業予定の場合も同様です。この場合は、正式な名称として決定をする前に調査を行なうことを強くお勧めいたします。

商標調査をすれば、商標的な問題・トラブルが生じるおそれのある他人の商標登録の存在を事前にチェックすることが可能です。

なお、商標調査は「弁理士」に依頼することをお勧めいたします。
できれば、商標分野を専門としている弁理士が望ましいでしょう。
※弁理士の多くは、「特許事務所」で働いています。
特許庁の無料データベース(J-PlatPat)等を利用して、自分で検索ができないこともありませんが、専門的な知識や経験がない場合は、中途半端な調査、誤った調査をしてしまうおそれがあります。

弁理士に商標調査を依頼すれば、「〇〇〇クリニック」と同一・類似の他人の商標登録はもちろん、上述した「〇〇〇」の部分の商標登録の存在などのチェックについても、通常はカバーされるはずです。

商標調査の結果、自身のクリニック名に問題がなさそうであれば一安心です。

ただ、商標登録は「早い者勝ち」のルールです。
今は問題がなくても、今後、第三者が商標的な問題・トラブルが生じ得る商標を登録してしまう可能性も否定できません

そこで、やはり自身のクリニック名を、この機会に商標登録しておくことが望ましいと言えるでしょう。商標登録出願については、調査を依頼した弁理士に、引き続き相談すると良いでしょう。



5.気になる他人の商標登録が見付かった場合は?

調査の結果、気になる他人の商標登録が発見された場合は、どうすれば良いでしょうか。

たとえば、上述の例のように、自身のクリニック名が「〇〇〇クリニック」である場合に、他人の「〇〇〇」の登録商標が見付かったようなケースです。

この場合は、その他人の商標の登録状況をまずは精査して、今後の方策を検討すべきでしょう。調査を依頼した弁理士などに、そのまま相談することをお勧めいたします。

もっとも安全・確実な対応は、「クリニック名の変更」ということになります。
しかし、費用・労力の面を考えても、そう簡単に決断できるものではありません。
あくまで、念には念を入れた場合の最終手段という感じになろうかと思います。

そこで、やはりこの場合も、自身のクリニック名である「〇〇〇クリニック」の商標登録を狙うのが現実的だと言えるでしょう。商標登録出願については、調査を依頼した弁理士に、引き続き対応してもらえるはずです。

もちろん、そもそも両商標の類似性は微妙な状況にありますので、商標登録出願をしても、他人の「〇〇〇」の登録商標が存在していることを理由として(すなわち、これに似ている商標と判断されて)、審査で引っかかる可能性は十分に考えられます。

しかし、近年の特許庁では、「〇〇〇クリニック」のような構成の商標は、あくまで全体として一つのクリニック名として把握されるものであり、「〇〇〇」の部分だけが要部になることはないから、「〇〇〇」とは非類似である(似ていない)という考え方がされる傾向にあります。

たとえば、実際に、「健美クリニック」と「健美」、「フレイムクリニック」と「FLAME」、「PET well clinic」と「PETWELL」等が非類似である(似ていない)と判断された事例があります。

よって、たとえ他人の「〇〇〇」の登録商標が存在していても、自身の「〇〇〇クリニック」が商標登録できるチャンスがないわけではありません。まずは諦めずに、なんとか登録が認められるよう尽力すべきです。商標登録ができれば、少なくとも形式的には、自身のクリニック名の独占的な使用が認められることになるのですから。

もっとも、上述の「健美クリニック」と「健美」等の事例は、いずれも「拒絶査定不服審判」でなされた判断であるという点には注意が必要でしょう。

「拒絶査定不服審判」とは、審査官の最終判断である「拒絶査定」に不服の場合に、特許庁に対して行う審判手続です。裁判の第一審に相当するものと理解すると、その位置付けがわかりやすいかと思います。

つまり、いずれの事例も、一度は「両商標は似ている」と審査官に判断された上で、「拒絶査定」が出されているのです。このような事実を踏まえますと、さすがにスムーズに商標登録できることは、あまり期待しない方が良いかもしれません。審査で引っかかった場合に、「似ていない」と主張・反論することなど、それなりにいろいろと「頑張る」必要があるでしょう。

また、うまく商標登録ができたとしても、100%安全とは言い切れません
「〇〇〇」を商標登録している、その他人が問題視すれば、「〇〇〇クリニック」の使用が商標権侵害であると主張してくる可能性は否定できないからです。

ただ、この場合であっても、自身が「〇〇〇クリニック」をきちんと商標登録していれば、相手方としても心理的にクレームは付けにくいはずですし、この事実を反論の根拠として大いに使えることに間違いはありません。商標登録をしていないよりは、しておくことにこしたことはないはずです。

いずれにしても、このような状況にある場合には、楽観視するのは禁物です。

対応策をよく理解した人のイメージ画像


当事務所がお手伝いできること

当事務所がお手伝いできることイメージ

当事務所では、商標的な観点からのクリニック名に関するご相談を承っております。もちろん、商標調査や商標登録もご依頼いただけます。

当事務所は、商標専門の特許事務所です。
商標実務15年以上の経験を有する商標専門の代表弁理士が、丁寧に担当させていただきます。

紫苑商標特許事務所の特徴
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