商標トラブル対策ガイド
新しい商品やサービスを世の中に出していこう。
インターネットで商品の販売やサービスの提供をしていこう。
そのような時、必ずぶつかるのが「商標」の問題です。
商標トラブルは、巻き込まれると予想以上に大変な目に遭います。
決して、ないがしろにして勢いで見切り発車をしてはいけません。
そこで、商標初心者の方々の「困った」について、本ページで特集いたしました。
将来起こってしまうかもしれない商標トラブル対策の知恵として、ご参考ください。
困った その1:商標を考えたい
「そもそも、商標はどのように決めていけばいいのだろう?」
最初にぶつかる「困った」に、どうやって対処していけばいいでしょうか?
何が商標になるのですか?
商標とは、自分の商品やサービスと、他人の商品やサービスを区別するために使われる「目印」(マーク)のことです。
ですから、商品やサービスの名称はもちろん、それらに表示するロゴマークや会社名、店舗名なども商標になり得ます。また、この「目印」とは、必ずしも目に見えるものに限定されません。条件を満たせば、「音」も商標になり得ます。
なお、1つの商品に使われる商標が、必ずしも1つとは限りません。
1つの商品のパッケージに、複数の商標が使われていることも珍しくありません。
どのような商標を採用してはいけませんか?
商標は、自分と他人の商品やサービスを区別する役目を果たします。
ですから、これができない商標は、基本的に採用するべきではないでしょう。
(なお、そもそも商標として使うつもりでなければ、それは別の話となります。)
たとえば、商品が「みかん」の場合、商標として「ORANGE」や「おいしい」、「あまい」、「愛媛」といった表示を使っても、他人の販売する「みかん」と区別することができませんね。「おいしいオレンジ」や「愛媛のみかん」のように、これらを組み合わせた場合も同様です。
このような、商品やサービスの内容(普通名称、品質、性質、生産地など)をズバリ表現したような商標にすることは、ブランド構築が現実的に難しくなるという観点からも、基本的に避けるべきでしょう。
なお、こういった商標は、後述する商標登録を受けることもできません。
次に、他人が商標登録をしている商標と、同じ商標や似ている商標についても、商標権侵害の観点から採用すべきではありません(詳細は、後述します)。
ネーミングのコツはありますか?
商品やサービスの理想的なネーミングとは、①「言いやすい」、②「読みやすい」、③「覚えやすい」、④「商品やサービスの特徴をイメージしやすい」、⑤「今までに他にない」語と言えるでしょう。(※詳細は、ネーミング関連書籍等をご参考下さい。)
ただし、これらを全て満たすというのも、現実的には難しいと言えます。たとえば、⑤「今までに他にない」ような造語であれば、③「覚えやすい」、④「商品やサービスの特徴をイメージしやすい」といった要素は、満たしにくくなるでしょう。それぞれのバランスを考えて、最適なネーミングにすることが大切です。
なお、後述する商標登録の観点からは、⑤「今までに他にない」ような造語の商標の方が、④「商品やサービスの特徴をイメージしやすい」商標よりも、一般的には登録が認められやすいと言えます。ただし、「商品やサービスの特徴をイメージしやすい」商標は、登録が認められるハードルが高い一方で、いざ認められた場合は、「強い商標」になると言えるでしょう。
ちなみに、④「商品やサービスの特徴をイメージしやすい」商標を採用する場合のポイントは、その特徴が「直接的、具体的」ではなく、「間接的、暗示的」に表現されているかです。
もちろん、「商品やサービスの特徴をイメージしやすく、かつ、今までに他にない」造語商標であれば、より理想的と言えるのは間違いありません。何度もいろいろな案を出して、検討を重ねましょう。
困った その2:商標を使いたい
「商標は考えたけど、自由に使っていいのかな?」
次にぶつかる「困った」に、どうやって対処していけばいいでしょうか?
「商標を使う」って、どういう行為なのですか?
一番わかりやすい例は、商品自体に商標を表示する行為です。
商品の包装箱に商標を表示したり、商品(たとえば、衣服)に付けたタグに商標を表示することも、商標を使う行為となります。
サービスであれば、店舗の看板や、サービスの提供のために利用する物、サービスを受ける人が利用する物に、商標を表示する行為などが当たります。
また、商品やサービスについての広告物や、価格表、取引書類に商標を表示することも、商標を使う行為となります。
なお、商標を使う行為は、リアルな世界に限られません。
インターネット上であっても、商品やサービスの識別標識として商標を表示すれば、商標を使う行為となります。
全ての場合が該当するわけではありませんが、ドメインネームやウェブサイト名として表示することや、ウェブサイトのソースコード内(メタタグ)に表示することも、商標を使う行為になり得ます。
商標を使う行為が問題となるのは、どのような場合ですか?
最も問題となるのは、あなたの使用する商標が、他人の登録商標(商標登録を受けた商標)と同じであったり、似ていたりする場合です。
この場合、商標を使う行為は、その他人の商標権を侵害している可能性があります。
※侵害行為となるには、実際には商品・サービスの共通性も要件となります。
後述のように、他人の商標権を侵害してしまうと大変な目に遭う可能性がありますので、絶対に使用を避けるべきです。
また、商標全体としては同じではなく、似てもいないと言える場合であっても、あなたの商標の中に、他人の有名商標を明らかにわかる形で含めることは、やめましょう。不正競争防止法違反として、厳しい制裁を受ける可能性があります。
もちろん、有名商標でなくとも、他人の商標のパクリやパロディは後のトラブルの元となりますので、厳に控えるべきです。
問題がある商標の使い方をした場合、どうなりますか?
他人の商標権を侵害するような商標の使い方をした場合には、以下のような目に遭う可能性があります。
(2)商品、サービスに利用する物、関連設備等を廃棄させられる
(3)損害賠償金を請求される
(4)逮捕されたり、罰金を科せられる
(5)テレビやネットで報道され、社会的信用が下がる
少なくとも、商標の変更を迫られ、蓄積してきたブランド力の低下は免れ得ません。そうなると、商品パッケージやカタログの回収、修正、変更に多額の費用も要します。裁判を起こされれば、さらに多額の訴訟費用も必要となります。
いずれにしても、謝って済む問題ではなく、シビアな状況に陥ることになります。
この点、くれぐれも肝に銘じておいてください。
自分の商標を使ってもOKかはどう確認すればよいですか?
商標を始めとする知的財産の専門家である「弁理士」に、ご相談されることを強くお勧めいたします。
独学での理解や自分本位の判断で商標を使い始めるのは、非常にリスクが高いです。ぜひ、商標を専門とする弁理士(商標弁理士)のいる特許事務所にご相談ください。
なお、他人の登録商標の検索全般についてや、簡易的な検索方法については、下記「ざっくり知りたい!商標検索」のサイトをご参照いただけます。
困った その3:商標登録をしたい
「商標登録ってなに?どうやってすればいいの?」
さらにぶつかる「困った」に、どう対処していけばいいでしょうか?
商標登録とはどのようなものですか?どうやるのですか?
商標登録については、下記「ざっくり知りたい!商標登録」、「ざっくり知りたい!商標登録2」のサイトに詳しく解説しておりますので、ぜひご参照ください。
特許事務所、弁理士の選び方ってありますか?
弁理士は、知的財産を取り扱うプロですが、それぞれ専門があるのが一般的です。
お医者さんに「内科医」「外科医」「歯科医」・・・とあるように、弁理士にも特許を専門とする弁理士、意匠を専門とする弁理士、商標を専門とする弁理士がいるのです。
商標の経験があまりない弁理士に相談して、後で「失敗した」という話もたまに耳にします。ですので、商標についてご相談をする場合には、やはり商標を専門としている弁理士に依頼するのがオススメです。
インターネットで特許事務所を探す場合、弁理士の専門分野や実力がわからないことが多いかとは思いますが、料金の安さや巧妙な売り文句だけを基準とはせずに、くれぐれも慎重にご検討ください。