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Q0-5:貴所では「返金保証」を採用していますか?

ANSWER

当事務所では、返金保証は採用しておりません。

最近、特にインターネット上では、商標登録について「登録できなかったら、費用をお返しします」
といった返金保証制度を採用している特許事務所が散見されます。
(返金保証の内容は、各事務所によっていろいろあるようです。)

たしかに、不景気が続く世の中で、商標出願費用の捻出も苦しい依頼人の実状を考えれば、
返金保証は依頼人の方々に優しく、魅力的に感じられるのではないかと思われます。

しかし、特許事務所は、人や時間を商品としたサービス業です。
サービスが具体的な形となって表れにくいことから、理解されにくい点も否めませんが、
サービス料金は、基本的にご依頼に携わった時間と専門家による知的労働の対価ということになります

ですので、たとえば、商標出願時にご請求させていただく手数料というのは、
依頼人の皆様とのご相談の上、商標出願の内容について検討し、指定商品等の記載を考案し、願書を作成し、
実際に特許庁に出願手続を完了するまでに要した時間と知的労働についての対価であると考えます。

そして、このご請求に関しては、(特許事務所側で作成した願書の不備が原因といったようなケースや、
商標調査で100%保証を行なっているようなケースを除いて)その後に審査で登録が拒絶された場合も、
否定されることはないはずです。

つまり、誤解を恐れずに言えば、「登録できなかったら、費用をお返し」する根拠はありません
お医者さんが、「手術の結果、失敗したら医療費をお返しします」と言っていたら、おかしいと思いませんか。
どんなに万全を尽くしても、手術が失敗することはあるでしょう。100%の成功保証などないからです。

商標登録も同じです。
弁理士がどんなに力を尽くしても、判断に落ち度がなくても、登録できない場合もあるのです。

近い例では、弁護士が、「裁判で負けたら、これまでの費用をお返しします」と言っているようなものです。
心意気は立派であると思いますし、もしかするとそのような弁護士もいるかもしれません。
ですが、これではビジネスとして成立しませんし、勝てる事件しか依頼を受けない原因ともなります。

なお、当事務所の場合、最終的に商標登録ができなかった場合には、
成功報酬を含む以降の費用(登録時の費用)について、ご請求が一切発生しないという取り扱いです。
※このような料金体系が、業界内でも一般的です。

当事務所では、このような考え方に基づき料金設定をしておりますので、
返金保証については、特許事務所のサービスには馴染まない制度であると考えております。

ところで、他人の先行商標の存在が理由で商標登録できなかった場合のリスクというのは、
実は出願費用の問題だけではありません

すでにその商標の使用を開始していれば、他人の商標権を侵害している状態にある可能性がありますので、
早急に商標を変更する必要があります。商品パッケージや商品カタログ、ウェブサイト上での広告があれば、
それらについても変更する必要がありますので、必要となる費用も相当なものになるはずです。

さらに、運が悪ければ、その他人に商標権侵害訴訟を提起されるリスクもあるでしょう。
商標権侵害訴訟が提起されてしまうと、訴訟にかかる費用、敗訴した場合の損害賠償費用、
世間への企業イメージの低下など、取り返しがつかないほどの甚大なダメージを受けるおそれがあります。
ライセンスを受けてこれらを回避する手段もありますが、それなりの費用がかかることは明白でしょう。

以上のようなリスクもありますので、返金保証を採用する事務所に依頼される場合であっても、
返金保証があるからという理由だけで安易に商標出願を依頼するのではなく、
商標調査を実施するなどきちんとした戦略を練った上で出願を行なうか否かをご検討いただき、
結果についてはいずれの場合であってもご納得いただくといったスタンスでご依頼いただくのが
よろしいのではないかと考えます。

商標登録ができなかった場合に、商標変更に要した費用や訴訟費用、
ライセンス料まで保証してくれる特許事務所はないはずです
ので。

依頼人のことを考えた返金保証サービス自体を否定するつもりはありませんが、
当事務所は上述の考え方を採りますので、大変恐れ入りますが、返金保証はいたしません。
ご依頼の際は、何卒ご理解いただけますと幸いです。