運輸業界の商標登録
人やモノを運ぶ「運輸サービス」は、私たちの暮らしに欠かせないものです。
ところが、運輸サービスは、「運ぶ」というサービスの性質上、何も工夫しなければ、提供者や提供の過程・状態が、顧客にわかりにくい一面もあると思われます。
そこで、ネーミングやロゴマークなどの「商標」が重要となります。
たとえば、輸送に用いる乗り物や、運送のための梱包資材・コンテナ等に商標を表示することで、他者のサービスと明確に区別することができます。そして、これによって需要者が誤認・混同するのを防止することができます。また、運輸サービスは、安全や信頼が重視されますから、これに使われる商標は、品質保証の役割も果たし、ブランド化しやすいという特徴もあると言えるでしょう。
ですから、運輸業界においては、商標を適切に保護することが重要となります。
そして、商標の保護に役立つのが「商標登録」です。
そこで、本ページでは、運輸サービス(輸送・運送・引越・倉庫)に関する商標登録のメリットや方法についてご紹介いたします。
1.商標登録のメリット
商標登録をすると、「商標権」という強力な権利を取得できます。
商標権によって、たとえば以下のようなメリットがあります。
1.その商標を独占して使うことができます。
2.他人が同じ商標を使うのを禁止できます。
3.他人が似ている商標を使うのを禁止できます。
4.ライセンスしたり、売ったり等、財産としても活用できます。
5.「®」を付けて、社会的信用をアップできます。
※上記は、商標登録をした商品・サービスの範囲内に限られます。
様々なメリットがありますが、事業者にとっての最も大きな商標登録のメリットは、「実質的に、その商標を事業で安心かつ安全に使い続けることが保証される」という点ではないかと考えられます。
このように、商標登録にはさまざまなメリットがあります。
商標登録は、運送業においても大いに役立つことでしょう。
ご参考:「商標登録をしないとどうなるのか」
なお、商標権の効力は、日本全国に及びます。
また、現実世界だけでなく、インターネット上での使用にも及びます。
2.運輸サービスに関する商標登録の方法
商標登録をするためには、特許庁に申請(出願)をすることが必要です。
そして、所定の審査をパスすることが登録の条件となります。
申請には、申請書となる「願書」を提出します。
願書には、登録したい商標と、商標を使用する(=保護を受けたい)商品やサービス等を記載します。ここに記載した内容に基づいて、商標権の効力範囲が決まります。
なお、これらの商品やサービスは、種類や用途などによって45のクラス(区分)に分類されています。たとえば、薬剤は第5類、文房具は第16類、被服類は第25類、といった具合です。願書には、この区分と、そこに分類される具体的な商品・サービスを併せて記載します。
商標登録は、「早い者勝ち」の制度であることに注意してください。
登録は、商標を使い始めた順ではなく、特許庁に申請した順に認められるルールです。
よって、他人が先にあなたと同じ商標や似ている商標を商標登録してしまうと、あなたは登録を受けることができなくなってしまいます。
それどころか、それ以降に商標を使い続ければ、商標権の侵害となってしまいます。
ですから、商標登録は、1日でも早く申請をすることが大切となります。
ちなみに、審査結果が出るまでには、通常約9か月~1年がかかります。
思いのほか時間を要しますので、この点からも1日も早い申請が重要です。
3.商標登録の費用
商標登録には、費用がかかります。
審査で引っかからずにスムーズに登録が認められた場合、(1)申請時、(2)登録時の2回のタイミングで支払いが発生します。
料金の額は、上述の区分の数によって変動します。
区分の数が増えれば増えるほど、料金が加算される仕組みです。
つまり、基本的に商標を保護したい商品やサービスの範囲が広くなればなるほど、費用が多くかかるということになります。
具体的な金額は、以下のようになります。
(2)登録時: 区分数×32,900円 ※10年分の登録料です。
たとえば、1区分の場合は、(1)申請時に12,000円、(2)登録時に32,900円が必要です。よって、商標登録(10年)には、最低でも44,900円が必要ということになります。
なお、特許事務所に依頼する場合には、これにサービス料金が加わります。
料金は特許事務所によって異なりますが、一般的には、最低でも7万~10万円程度が上記金額にプラスされることが多いと思われます。
また、審査で引っかかった場合等には、対応するにあたって、手続に応じた諸費用が発生する場合がありますので、ご留意ください。
4.願書に記載するサービスの例
運輸サービスや関連サービスは、主に「第39類」の区分に属します。
運輸サービスについて商標登録の申請をする場合、願書には以下のような第39類に含まれるサービスを選択して、記載することになるでしょう。
輸送サービス
- 貨物の輸送
- 旅客輸送
- 鉄道による輸送
- 車両による輸送
- 船舶による輸送
- 航空機による輸送
関連サービスとしては、以下のようなものがあります。
輸送関連サービス・引越・倉庫- 貨物のこん包
- 貨物の輸送の媒介
- 貨物の積卸し
- 引越の代行
- 引っ越しの請負い
- 引越荷物の梱包
- 引越荷物の一時預り
※引っ越しに伴う清掃や工事のサービスは、他の区分となります。 - 倉庫における保管
- 寄託を受けた物品の倉庫における保管
- 他人の携帯品の一時預かり
- 配達物の一時預かり
- 物品の保管
- 倉庫の提供
- 倉庫の貸与
なお、第39類には他にも以下のようなサービスが含まれますので、ご自身の業務に合わせて、追加されると良いでしょう。
その他- 自動車の運転の代行
- 荷役機械器具の貸与
- 包装用機械器具の貸与
- 船舶の引揚げ
ほか
初めての場合、どのサービスを含めば良いのかわかりにくいと思います。
第39類以外の区分に含まれる商品やサービスも、対象となる場合があるでしょう。
保護に漏れのない、強い商標権を取得するためにも、商標登録は専門家である弁理士にご依頼されることをおすすめいたします。
※注:上記のサービスの記載はあくまで一例です。
上記は2018年1月現在の情報に基づくものです。今後、商品・サービスの分類や記載の可否が変更となる可能性がありますので、あらためて各自でご確認願います。
当事務所がお手伝いできること
当事務所では、弁理士が商標登録の代行サービスを承っております。
運輸サービス(輸送・運送・引越・倉庫)に関する商標登録も、もちろん可能です。
当事務所は、商標専門の特許事務所です。
商標実務経験10年以上の代表弁理士が担当させていただきます。
Eメールがご利用できる環境があれば、全国対応が可能です。
専門家に依頼することで、審査にパスできる可能性を高める申請書の作成、適切な権利の取得、商標を登録・使用する際の適確なアドバイスにご期待いただけます。
貴社の時間や労力の節減にもつながります。
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