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薬局・ドラッグストアのための商標登録

薬剤師コンビの写真

薬局ドラッグストアでは、主に他社の医薬品等の商品を取り扱っています。
そのため、経営者の方々は、「商標」を意識することがあまりないかもしれません。

しかし、商品・サービスの識別標識となるものは、「商標」になります。
薬局やドラッグストアの名称やロゴマークなども、商標になり得るのです。

ライバルに、紛らわしい薬局の名称を使われたり、ドラッグストアのロゴマークと紛らわしい表示を使われたりすると、顧客の誤認混同を引き起こしてしまう可能性があります。また、この状態を放置すれば、自身の信用・信頼にも悪い影響を及ぼします。

ですから、薬局やドラッグストアの商標を適切に保護することは大切と言えます。
そして、商標の保護に役立つのが「商標登録」です。

商標法の改正によって、2007年4月1日からは「小売サービス」に関する商標登録ができるようになりました。このような事情もあり、薬局やドラッグストアに関連した商標登録もさかんになっています。

そこで本ページでは、薬局やドラッグストアの商標登録における、登録対象や留意点などについて簡単にご説明いたします。

※注:商標登録における「小売サービス」について
商標登録の対象となる「小売サービス」とは、商品を販売するサービス(販売行為)自体のことではない点にご注意ください。ここでは、顧客に対する品揃え、陳列、接客、商品選択の相談など、商品の販売に付随するサービスを意味します。ただ、商標登録の必要性という観点においては、実務上、あまり厳格には区別されていない印象がありますので、これを検討する余地はあると言えるでしょう。


1.薬局・ドラッグストアの商標

医薬品のイラスト

まず、薬局やドラッグストアの商標にはどのようなものがあるか見てみましょう。


(1)薬局・ドラッグストアの名称

薬局・ドラッグストアの名称は、他人の商品・サービスとの識別標識になります。
よって、「商標」になり得るものですから、商標登録の対象となります。

ただし、「田中薬局」や「佐藤薬店」といったような、ありふれた名称については、そもそも商標としての機能を果たし得ない(=識別力が認められない)という理由で、原則として登録は認められないと考えられます。

このような名称であれば、商標登録をしなくても、自由に使うことができます。
その一方で、他人が使っていても、基本的にクレームを付けることはできません。

ドラッグストアの名称は、造語性が高いものが採用される傾向があるようですので、識別力がないという理由で登録が認められないケースは、薬局の名称に比べて少ないように思います。

ちなみに、2018年3月30日現在、特許庁のデータベース上では、「○○○薬局」という商標登録が約230件以上存在していることが確認できました。


(2)ロゴマーク

薬局・ドラッグストアのロゴマーク(シンボルマーク)を採用している場合は、これらも「商標」となり得ますから、商標登録の対象となります。

特にシンボルマークは、よほどシンプルな図形でない限り、審査で識別力が否定されることはなく、商標登録できる可能性は一般的に高いと言えます。


(3)その他

その他、オリジナルの商品名やサービス名インターネット上のサイト名マスコットキャラクターのイラストや名称なども、商標になり得ると考えられます。

これらについても、必要に応じて商標登録をご検討されるとよろしいでしょう。

※上掲のものは、あくまで一例です。
  商品・サービスの識別標識となるものであれば、他にも商標になり得ます。


2.商標登録のメリット

商標は、特許庁に申請をして所定の審査をパスすることで、「商標登録」を受けることができます。

そして、商標登録によって、「商標権」という強力な権利が生じます。

商標権があれば、権利の範囲内で、その商標の使用を独占することができます。
また、他人が無断で使っている場合には、差止めや損害賠償を求めることも可能です。

さらに、商標登録をすることで、その商標に「®」を付けることができます。
®は法律に定められたものではありませんが、この表示があることで、取引者や需要者の社会的信用をアップすることが期待できるでしょう。

その他にも、商標権を財産権の一つとして、利用・活用することも可能です。

このように、商標登録にはさまざまなメリットがあります。
ご参考:「商標登録をしないとどうなるのか


3.商標登録のやりかた

商標登録の申請をするためには、申請書となる「願書」を特許庁に提出します。

願書には、登録を受けたい商標と、商標を使用する商品やサービス等を記載します。
ここで記載したものが、商標権の権利範囲となりますので、慎重な検討が必要です。
なお、これらの商品やサービスは、種類や用途等から45のグループ(区分)に分類されています。たとえば、化学品は第1類、化粧品は第3類、薬剤は第5類、といった具合です。願書には、この区分とそこに分類される具体的な商品・サービスを併せて記載することが必要となります

なお、商標登録は「早い者勝ち」の制度であることに注意してください。
登録は、商標を使い始めた順ではなく、特許庁に申請した順に認められるルールです。
よって、他人が先にあなたと同じ商標や似ている商標を商標登録してしまうと、あなたは登録を受けることができなくなってしまいます。
それどころか、それ以降に商標を使い続ければ、商標権の侵害となってしまいます。

ですから、商標登録は、1日でも早く申請を完了することが大切です。

ちなみに、特許庁の審査が完了するまでには通常、約7~9ヶ月がかかっています。
意外と時間がかかりますので、この点からも「1日でも早い」申請が大切と言えます。


4.商標登録の料金

商標登録には、費用がかかります。
審査で引っかからずにスムーズに登録が認められた場合、(1)申請時(2)登録時の2回のタイミングで支払いが発生します。

料金の額は、上述の区分の数によって変動します。
すなわち、区分の数が増えれば増えるほど、料金が加算される仕組みです。

薬局やドラッグストアの商標登録では、区分数は1~2になることが多いでしょう。

具体的な料金は、以下のようになります。

(1)申請時:  3,400円+(区分数×8,600円)
(2)登録時:  区分数×32,900円  ※10年分の登録料です。

たとえば、1区分の場合は、(1)申請時に12,000円、(2)登録時に32,900円が必要です。よって、商標登録(10年)には、最低でも44,900円が必要ということになります。

なお、特許事務所に依頼する場合には、これにサービス料金が加わります。
料金は特許事務所によって異なりますが、一般的には、最低でも7万~10万円程度が上記金額にプラスされることが多いと思われます。

また、審査で引っかかった場合等には、対応するにあたって、手続に応じた諸費用が発生する場合がありますので、ご留意ください。


5.願書に記載する商品・サービスの例

(1)薬局に関する商標登録の場合

薬局の場合、商標登録の申請で指定するサービスは、調剤医薬品等の小売サービスが特に眼目になると考えられます。

まず、調剤については、「第44類」の「調剤」、「薬剤師による調剤」、「処方箋による調剤」などを願書に記載すると良いでしょう。

同じ第44類には、「薬局における助言」、「服薬指導」、「健康管理に関する指導及び助言」、「栄養の指導」、「医療情報の提供」、「調剤に関する指導・助言」、「調剤に関する情報の提供」なども記載できます。これらについても、併せて記載することを検討すると良いでしょう。

小売サービスについては、「第35類」の「薬剤及び医療補助品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」等を願書に記載することになります。

その他、第35類には、薬局で取り扱っている他の商品の小売サービスも追加すると良いでしょう。

なお、願書に「調剤」を記載した場合には、申請人が「薬剤師、医師、歯科医師又は薬局の開設の許可を受けた法人」であることを、特許庁でチェックされます。
これが確認できないと審査をパスできないとされていますので、注意が必要です。

また、あまりないかもしれませんが、独自に名称を付けた漢方薬などを販売しているような場合は、「第5類」の「漢方薬」などを記載しても良いでしょう。

その他、必要に応じて取り扱う商品・サービスを漏れなく記載してください。
※上記はあくまで一例を挙げたものです。


(2)ドラッグストアに関する商標登録の場合

ドラッグストアの場合、商標登録の申請で指定するサービスは、医薬品等の小売サービスがメインとなるでしょう。

願書に記載する眼目のサービスとしては、「第35類」の「薬剤及び医療補助品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」が考えられます。

ただ、一般的にドラッグストアでは、医薬品に加え、健康・美容に関する商品や、日用品、食品・飲料なども取り扱っていることが多いでしょう。

ですので、願書には「第35類」の「薬剤及び医療補助品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」のほかにも、たとえば「化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」や、「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」なども併せて記載することで、保護の範囲を適切にすることができます。

もちろん、他にも取扱商品があれば、それらの小売サービスも追加してください。

なお、大規模なドラッグストアになると、総合スーパー並みの品揃えとなることがあります。このような場合、所定の条件を満たすことで、願書に「総合小売サービス」を記載することもできます。具体的には、「第35類」に「衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」といった表記で記載します。

店舗で調剤も行なっている場合は、上述の留意点に注意して、願書に「第44類」の「調剤」等を含ませると良いでしょう。なお、同じ区分内のサービスである「医業」を加えるケースをしばしば目にしますが、この場合、特許庁の審査において申請人が医師または医療法人であることがチェックされます。医師または医療法人が申請人でなければ登録を受けることは難しいと考えられますので、本当に業務を行なっていないのであれば、当初より記載しないことをお勧めします。

独自ブランド(いわゆるプライベートブランド)として、商品に自社の商標を使っているような場合は、それらの商品についても商標登録の対象とすると良いでしょう。

その他、必要に応じて取り扱う商品・サービスを漏れなく記載してください。
※上記はあくまで一例を挙げたものです。


(3)第35類のサービス記載は要注意!

願書への「第35類」のサービス記載には、注意が必要です。
第35類の記載については、特許庁の審査で特殊な取り扱いがされているためです。

たとえば、上述のように小売サービスを複数記載した場合や、総合小売サービスを記載した場合には、それぞれ特許庁における審査運用上の特別なルールがあることが挙げられます。かなり複雑なルールで、業務証明を行なう必要がある場合もあり、一般の方には対応が難しいことも少なくありません。

したがいまして、薬局やドラッグストアに関する商標登録をする場合は、ご自身では申請をされずに、専門家である弁理士にご依頼されることを強くおすすめいたします。


6.おわりに

薬局は、地域密着の店舗がほとんどと言えることから、商標登録の必要性をあまり感じられないかもしれません。

ですが、商標権の怖いところは、権利の効力が日本全国に及ぶという点です。
たとえ、小さな町でひっそりと経営していたとしても、使用する商標が他人の商標権の範囲内のものと疑われれば、権利侵害のクレームを受ける可能性があります。

特に、インターネットが普及した現在においては、どんなに小規模に事業を行なっていたとしても、簡単にホームページ等から情報や所在が入手・確認できるため、誰もが商標権侵害のクレームを突き付けられるリスクがあると言えます。

この点、商標登録をしておけば、その商標をそのままの態様で使用する限りにおいては、原則として、他人の商標権を侵害することはありません。
安全に商標を使うことができ、安心して事業に専念できるメリットがあるのです。

比較的広い地域で展開されるドラッグストアについては、より重要性が高くなるのは言うまでもないでしょう。

この機会に、ぜひ一度、商標登録をご検討されてはいかがでしょうか。


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