食品・飲料のための商標登録
食品や飲料は、人間が生きる上で欠かせない商品の一つです。
美味しいお菓子を食べたり、お酒をたしなんだり。
食品や飲料は、人々の心を満たすという意味でも、大切な役割を果たします。
本ページでは、食品・飲料の商標登録について、概要や特徴などをご紹介します。
食品業界の皆様、特に、初めて商標登録を検討している方のご参考になれば幸いです。
1.商標登録とは何か?
2.食品や飲料の商標登録が重要な理由
3.食品・飲料に関する商標の特徴
4.商標登録の方法とは?
5.食品・飲料に関する商標登録の注意点
6.食品・飲料に関する商品の分類と区分
7.弁理士へのご依頼のススメ
1.商標登録とは何か?
世の中には、食品や飲料の様々な商品が製造・販売され、流通しています。
これらの商品には、商品名や、製造者・販売者を表わす文字・マークが使われており、他の商品との識別に役立っています。
このような識別標識となる文字・マークは、「商標」になり得ます。
商標があるからこそ、私たちは欲しい商品を探し、購入することができるのです。
これらの商標は、特許庁に申請(出願)をして、所定の審査をパスすることにより、「商標登録」を受けることができます。
そして、商標登録をすることで、「商標権」という強力な権利を取得できます。
商標権があれば、その権利の範囲内において、以下のようなメリットがあります。
2.他者が、事業で同じ商標を使うのを禁止することができる。
3.他者が、事業で似ている商標を使うのを禁止することができる。
※注:実際には、商品やサービスの共通性も考慮されます。
商標権の効力は、日本全国、ネット上の使用に対しても及ぶため強力です。
もちろん、商標登録のメリットは、この他にもさまざまです。
なお、商標登録は「早い者勝ち」の制度であることに注意が必要です。
登録は、商標を使い始めた順ではなく、特許庁に申請した順に認められるルールです。
ですから、商標登録は、1日でも早く申請を完了することが大切となります。
「商標登録とは?」
2.食品や飲料の商標登録が重要な理由
食品や飲料の商標登録は、その商品の性質を考慮すると、特に重要だと言えます。
食品や飲料は、直接人間の体内に送られるものですから、健康面や衛生面への影響を十分に注意する必要があります。すなわち、品質がとても大切になります。
もし、他社が貴社と同じ名称や紛らわしい名称の商品を販売すると、どうなるでしょうか。それらの場合、どのような品質かわからない商品が、市場で混在してしまうことになります。特に、劣悪な他社商品が大量に出回れば深刻な事態にもなり得ます。
また、他社が貴社のマークやパッケージに似せたモノマネ商品を販売すると、どうなるでしょうか。それらの場合、消費者が誤って商品を購入してしまうリスクがありますし、貴社の売り上げや信用にも当然影響を及ぼすことになるでしょう。
このような他社の行為は、一刻も早く排除しなければなりません。
そこで強い味方となるのが、「商標権」の活用なのです。
商標権は、商標登録をすることによって取得できる権利です。
つまり、商標登録をしておくことが、これらの対策としても非常に重要となります。
もし、食品や飲料の商標登録をしない場合、一般的な商品と比べて、何かトラブルが生じた際には、自社だけではなく大切な消費者に対しても大きな不利益を与えるリスクがあることは、十分に肝に銘じておく必要があるでしょう。
3.食品・飲料に関する商標の特徴
「商標」とは、商品やサービスの識別標識のことでした。
実際には、文字や図形(ロゴマーク)が、商標の多くを占めていると言えます。
それでは、食品や飲料に関する商標とは、どのようなものでしょうか。
食品や飲料の商品に使用する商標には、その性質上、他の商品分野と比較して以下のような特徴があると考えられます。
(1)複数の商標が同時に使われるケースが比較的多い
食品・飲料の商品については、文字として表示される商品名・商品のシリーズ名や、製造者・生産者を表すロゴマークが、主に商標として機能すると言えるでしょう。
食品・飲料の商品には、衛生上、商品パッケージがあるのが普通です。
そして、このパッケージには、商品に関するさまざまな情報が表示されています。
もちろん、ここには商標も表示されることになります。
実際に商品パッケージを見てみると、さまざまな商標を確認することができます。
このように、食品・飲料の商品分野においては、1つの商品に使われる商標は必ずしも1つではなく、複数の商標が同時に使われることが多いのが特徴的と言えます。
よって、他の一般的な商品分野よりも、商標登録の対象として検討すべき商標の数が比較的多くなる傾向があるのも、食品・飲料に関する商標の特徴と言えるでしょう。
(2)一般名称を一部に含む商標が比較的多い
食品・飲料の商品に使われる商標は、内容や特徴がわかりやすいものが理想的です。
そのため、特に食品や飲料に関する商品名の商標には、その一部に一般名称を含むものが比較的多いことも特徴と言えます。
たとえば、「○○茶」、「〇〇パン」、「○○カレー」、「〇〇ラーメン」、「○○ケーキ」、「○○プリン」、「○○ふりかけ」などが挙げられるでしょう。
しかし、後述のように、このような特徴が、しばしば商標登録の場面で、商標同士の類否判断を困難にしているといった実状もあります。
(3)パッケージデザインも商標になり得る
食品・飲料に関する商品は、スーパーやコンビニなどで、同じ種類のものがまとめて陳列され、販売されるのが一般的です。これらの商品は、箱やパック・容器などの形で売られることがほとんどですが、消費者が必ずしもそこに表された商品名やロゴマークだけを目印に、商品を識別し、購入するとは限りません。
たとえば、以前に購入した商品の包装箱・パック・容器の色合いや形状、表示された文字・写真の構成、その全体的なイメージといった、パッケージデザインを記憶して、他の商品と識別することも少なくないでしょう。
つまり、食品・飲料の商品については、それらのパッケージデザイン自体も、商標としての機能を果たし得ることが考えられます。
そのため、ライバルとなる他社が、商品名はまったく違っているものの、パッケージデザインを似せることで、商品を取り違えた消費者の取り込みを狙うかもしれません。このような場合、たとえ貴社が商品名の商標登録をしていたとしても、まったく異なる名称が使われていれば、商標権によってパッケージのマネをやめさせるのは困難です。
そこで、食品や飲料の分野においては、商品名だけでなく、パッケージデザイン全体を商標登録するケースも少なくありません。パッケージデザインは意匠権による保護が有効と考えられますが、商標権も取得することでより保護が強固になると言えます。
4.商標登録の方法とは?
それでは、実際に商標登録をしたい場合にはどうすればよいのでしょうか。
(1)商標登録をするための手続
商標登録をするためには、特許庁への申請(※正確には「出願」と言いますが、本ページではわかりやすさを優先して、以下「申請」と表記します)が必要です。
出願をするには、申請書となる「願書」を作成して提出します。
現在は、インターネットを用いたオンライン手続が主流です。
願書には、登録を受けたい商標と、商標を使用する商品やサービス等を記載します。
商標登録は、商品やサービスとセットで行なうというイメージです。
ここで記載したものが、商標権の権利範囲となりますので、慎重な検討が必要です。
願書に記載する商品やサービスは、45のグループ(区分)に分類されています。
たとえば、化学品は第1類、化粧品は第3類、薬剤は第5類…、といった具合です。
願書には、この区分と、それらに分類される具体的な商品・サービスを併せて記載することが必要となります。
願書を提出すると、特許庁の審査官によって審査がなされます。
そして、無事にパスすると、商標登録料の納付を経て、正式に商標登録となります。
現在、審査結果が出るまでには通常、約6か月程度がかかっています。
意外と時間がかかりますので、この点からも「1日も早い」出願手続が大切です。
(2)商標登録にかかる費用
商標登録をするためには、費用がかかります。
審査で引っかからずにスムーズに登録が認められた場合、(1)申請時、(2)登録時の2回のタイミングで支払いが発生します。
料金の額は、願書に含める「区分の数」によって変動します。
すなわち、区分の数が増えれば増えるほど、料金が増額になる仕組みです。
具体的な金額は、以下のようになります。
(2)登録時: 区分数×32,900円 ※10年分の登録料です。
たとえば、「第30類」だけの1区分を指定する場合は、
(1)申請時に12,000円、(2)登録時に32,900円が必要です。
よって、商標登録(10年)には、最低でも44,900円が必要ということになります。
なお、弁理士に依頼する場合には、これにサービス料金(報酬)が加わります。
料金は、各々の弁理士が所属する特許事務所によって異なります。
また、審査で引っかかった場合等には、対応にあたって必要となる手続などに応じた諸費用が発生する場合がありますので、ご留意ください。
5.食品・飲料に関する商標登録の注意点
食品や飲料の商標登録においては、特に以下のような注意点があると考えられます。
(1)指定する区分に注意が必要
前述のように、商標登録を申請するために作成する願書には、保護を求める商品やサービスを記載する必要があります。そして、これらの商品やサービスは実務上、45のグループ(区分)に分類されています。
その中でも、食品や飲料に関する商品は、特定の1つの区分ではなく、あちこちの区分に分類されているのが特徴的です(※詳細は後述)。
つまり、食品や飲料に関する商標登録においては、指定する区分には特に注意が必要と言えるでしょう。
願書を作成する際には、誤った区分を指定することなく、また、本当に保護が必要な商品が含まれる区分を見落とさないように、細心の注意が必要となります。
(2)商標の類否判断が特に難しくなる場面がある
食品・飲料の商品に使われる商標は、わかりやすいものが好まれるようです。
そのためか、食品・飲料の商品分野では、似たような商標が採用されやすい傾向があるのも特徴と言えます。
特許庁における審査では、他人が先に商標登録をしている商標と似ている商標には、登録が認められません。ですから、商標登録までの過程では、ある商標と他の商標が似ているかどうかの類否判断が争われることが少なくありません。
しかし、実際には、商標が似ているかどうかの判断というのは簡単ではありません。
なぜなら、どういう場合に似ていると言えるのかという絶対の基準がないからです。
前述のように、食品・飲料の商品分野では、商標の一部に一般名称が含まれることも少なくないことから、これが特に類否判断を難しくする要因となっています。
たとえば、「○○茶」と、そこから一般名称を抜いた「○○」の商標は似ているのか?といったことが問題となる場合です。
このような商標の類否について、過去に特許庁の審判等で争われた一例としては、「気配り弁当」と「気配り」、「養寿カレー」と「養寿」、「ゲンコツコロッケ」と「ゲンコツ」などがあります。これらは結論として、「似ている」と判断されました。
一方、「俺の蕎麦」と「俺の」、「養寿麺」と「養寿」、「和(なごみ)の菓子」と「和み」などについても、似ているか否かが争われましたが、いずれも「似ていない」と判断されています。
似ている場合と似ていない場合の基準のちがい、明確にわかりますでしょうか。
一般的な感覚では「似ているのでは?」と感じる商標同士でも、食品・飲料といった商品の性質や、実際の取引実情から、「似ていない」と判断された例も少なくはなく、このボーダーラインの予測が、とても難しくなっています。
(3)商標の識別力が問題となるケースが多い
前述のように、食品や飲料に関する商品に使用される商標は、それらの内容や特徴がわかりやすいものが理想的と言えます。
そのため、商品の内容や特徴(品質)を表わした語を商標の一部に含んだり、これらと商品の一般名称を結合させた商標が採用されることが少なくありません。たとえば、「みかん」に使用する「あまいオレンジ」とか、「ミルク」に使用する「濃厚な牛乳」などが例として挙げられるでしょう。
しかし、このような表示は、通常は商品の識別標識としての機能を果たしませんし、取引上も、誰もが使う必要のあるものだと言えます。ですから、このような商標を登録申請したとしても、特許庁の審査では識別力が認められないという理由で、原則として商標登録は拒絶されることになっています。
食品や飲料の商品に使われる商標は、わかりやすさ重視の構成となりやすいためか、商標登録の際には、この識別力が問題となる場合が比較的多いという特徴があります。
ただ、一見すると識別力がないように思われる語であっても、これがあくまで暗示的なものとか、間接的なものだと判断されれば、商標登録が認められる場合もあるため、実務ではこのボーダーラインがしばしば争われています。
実際、このような一見識別力がないと思われるような商標は、消費者にとっては、「商品の特徴がわかりやすく、覚えやすい」ことから、非常に強い商標となり得ます。
ですから、あえて商標登録にチャレンジする企業も少なくないのです。
そして、そのような商標に登録が認められるケースも、決してまれではありません。
食品や飲料の商品分野においては、「商標登録なんてされているわけないだろう」と思っていた語に商標権が存在していることもあり得るため、注意が必要です。自社の商標を使い始める前に、商標調査は必須と言えるでしょう。
6.食品・飲料に関する商品の分類と区分
上述のように、食品や飲料に関する商品は、様々な区分に分類されています。
以下でその一部をご紹介します。
<食品類>
第5類
・乳幼児用食品
※「食餌療法用食品」には、たとえば「腎臓病患者用パン」や「糖尿病患者用パン」が含まれると考えられます。
※「乳幼児用食品」には、たとえば「乳幼児離乳食」が含まれます。
第29類
・乳製品
・食肉
・卵
・食用魚介類( 生きているものを除く。)
・冷凍野菜、冷凍果実
・加工野菜、加工果実
・肉製品、加工水産物
・油揚げ、豆腐、こんにゃく、納豆など
・カレー・シチュー又はスープのもと
・お茶漬けのり、ふりかけ その他
※「菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものに限る。)」が、
2020年より追加されました。
たとえば、「甘栗、甘納豆、焼きりんご」などがこれに含まれます。
※「肉製品」には、たとえば「コロッケ、ハンバーグ、ソーセージ」が含まれます。
「加工水産物」には、たとえば「かまぼこ、ちくわ、はんぺん」が含まれます。
第30類
・パン、サンドイッチ
・中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットドッグ、ミートパイなど
・調味料、香辛料
・穀物の加工品
・ぎょうざ、しゅうまい、すし、たこ焼き、弁当など
・米 その他
※2020年より、従来の第30類の「菓子」の表記が、
「菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。)」
に変更されました。
なお、「果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とする」菓子は、
2020年からは第29類に含まれることになりますのでご注意ください。
※「ハンバーグ」は第29類ですが、「ハンバーガー」は第30類に含まれます。
似たような商品が別の区分に分類されていることがありますので注意が必要です。
第31類
・果実(フルーツ)
・食用魚介類( 生きているものに限る。)
・海藻類 その他
※「冷凍野菜」や「冷凍果実」は、第29類になります。
<飲料類>
第5類
・乳幼児用飲料
・薬用酒
※「食餌療法用飲料」には、たとえば「糖尿病患者用の果肉飲料(医療用のもの)」が含まれると考えられます。
第29類
・豆乳
・調理用野菜ジュース
※「飲料用野菜ジュース」は、第32類になります。
第30類
・コーヒー、ココア、カフェオレ その他
※「ミルク」は第29類に含まれますが、「ミルクコーヒー」だと第30類に含まれることになります。
第32類
・清涼飲料
・果実飲料
・飲料用野菜ジュース
・乳清飲料
※「ビール」はお酒ですが、第32類に含まれます。
※「発泡酒」も第32類に含まれますが、願書に「発泡酒」という記載はできません。
この場合、たとえば「ビール風味の麦芽発泡酒」と記載する必要があります。
第33類
・焼酎
・洋酒
・果実酒
・酎ハイ
・中国酒
・薬味酒
※「日本酒」も第33類に含まれますが、願書への記載の際には注意点があります。
詳細は、こちらをご参照ください。
このように、惣菜の種類で違う区分だったり、冷凍されたものが違う区分だったり、飲料でも異なる区分だったり、食品・飲料の商品分類はかなり複雑となります。
初めての商標登録の場合、ご自身での対応はハードルが高くなるかもしれません。
できれば、専門家である弁理士へのご相談・ご依頼をお勧めいたします。
※注:上記に挙げた商品は、あくまで一例です。
上記の商品表記は、過去に特許庁で認められたものですが、将来的に運用変更がされる可能性があります。また、これらが属する区分についても、将来的に変更になる可能性がございますので、実際に願書を作成する際には、あらためてご確認を願います。
7.弁理士へのご依頼のススメ
商標登録は、貴社ご自身でも、申請などの手続をすることが可能です。
しかし、その場合、準備や対応にはそれなりの時間や労力が必要となるでしょう。
制度の理解不足から、誤って意味のない商標登録をしてしまうリスクもあります。
そこでオススメなのが、知的財産権の専門家である「弁理士」の活用です。
弁理士に依頼すれば、商標登録の完了までを代理人として任せることができます。
審査で引っかかってしまった場合は、適切な対応の助言などを受けることもできます。
費用はかかってしまいますが、「安心を買える」と言うことができるでしょう。
なお、弁理士の多くは「特許事務所」で仕事をしています。
初めての商標登録は特に、まずは弁理士にご相談されることをお勧めいたします。
ぜひ、ご検討ください。
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貴社に代わって、弁理士が申請準備から登録完了までの手続をお進めいたします。
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