類似商品・役務審査基準(国際分類第12-2025版対応)の公表
<新着ニュース> 2024年12月16日
今年も年末恒例の、「類似商品・役務審査基準(国際分類第12-2025版対応)」が、特許庁のウェブサイトに公表されました。
この「国際分類第12-2025版」は、令和7年1月1日以降の出願に適用されます。
今回の改訂は、それほど多岐に渡るものではありません。
ただし、実務上の影響が特に大きいと考えられる変更点が二つ挙げられます。
一つは、「介護」に関する役務が、第44類から第45類に区分変更となる点です。
もう一つは、第29類と第30類に分かれた「菓子」についての更なる表示変更です。
その他にも、業界によっては注意が必要な変更点も散見されます。
今回も、特許庁による「変更点一覧」を確認いたしましたので、本ページで内容をまとめてみたいと思います。皆様の今後の実務においてご参考になれば幸いです。
なお、下記の情報は、変更点一覧にある一部を抜粋したものです。
マイナーな変更点は他にもありますので、念のため、各自で上記特許庁のサイトをご確認願います。また、国際分類表の変更点も併せてご確認されることをお勧めいたします。
今後、更なる変更や修正・訂正が入る可能性もあります。
情報のご利用に当たっては、適宜特許庁のホームページもご確認願います。
1.新規追加
「国際分類第12-2025版」では、以下の商品等が新たに追加されています。
・第6類「金属製屋外用日よけ」(20D01)
・第19類「屋外用日よけ(金属製又は織物製のものを除く。)」(20D01)
・第22類「織物製屋外用日よけ」(20D01)
・第7類「業務用電気ミキサー」(09E28)
・第7類「家庭用電気ミキサー」(11A06)
・第27類「リノリウム製壁シート」(07A03)
・第27類「リノリウム製壁タイル」(07A03)
・第27類「リノリウム製床シート」(07A03)
・第27類「リノリウム製床タイル」(07A03)
現在、「日よけ」は第20類に属する商品(20C01)とされていますが、これが後で挙げるように「屋内用日よけ」と明確化されたことから、「屋外用日よけ」については主な原材料に応じて、第6類「金属製屋外用日よけ」(20D01)、第19類「屋外用日よけ(金属製又は織物製のものを除く。)」(20D01)、第22類「織物製屋外用日よけ」(20D01)に分類されるとされ、これらが追加されたものと考えられます。
「電気ミキサー」については、現在の特許庁の審査でも、第7類で「業務用電気ミキサー」(09E28)、「家庭用電気ミキサー」(11A06)の表記は認められています。
2.区分の変更
「国際分類第12-2025版」では、以下の商品・役務等の区分が変更となります。
・第44類「施設における介護」(42W02) → 第45類へ
・第44類「訪問による介護」(42W02) → 第45類へ
・第20類「すさ」(34E03) → 第19類へ
これまで第44類に分類されていた「介護」に関連する役務が、第45類に区分変更となります。これは、元々第45類に分類されている「家事の代行」や「ベビーシッティング」に関連する役務であると、国際分類で確認されたことが理由のようです。
高齢化が進む我が国では、どちらかといえば「介護」は「医療」に近いイメージがあるのではないでしょうか。実際、介護サービスや介護施設を提供している医療機関も存在していますし、介護職と医療従事者の連携も、最近ではより重視される傾向にあります。よって個人的には、現在のように「医療」関連の役務が分類される第44類と同じ区分の方が妥当なように思え、この変更には首肯できないものがあります。
「介護」に関連する役務が第45類になると、これまでのように「医療」と「介護」に関連する役務を、第44類の一つの区分でまとめて指定して商標登録をすることができなくなります。すなわち、令和7年からは、必要に応じて、第44類と第45類の二つの区分で商標登録をしなければなりません。
「医療」と「介護」の両方に関連する役務について使用している商標がある場合は、令和6年中に出願手続をしておくことが、費用の観点からはお勧めされるということになります。
3.表示変更
「国際分類第12-2025版」では、以下の商品等の表示変更がされています。
→
「菓子(動物性食品又は野菜その他の食用園芸作物を主原料とするものに限る。)」
・第30類「菓子(肉・魚・果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。)」
→
「菓子(動物性食品又は野菜その他の食用園芸作物を主原料とするものを除く。)」
・第5類「綿棒」 → 「医療用綿棒」
・第6類「金属製金具(「安全錠・鍵用金属製リング・金属製鍵・南京錠」を除く。)」
→ 「金属製金具(「鍵用金属製リング・金属製安全錠(電気式のものを除く。)・金属製鍵・金属製南京錠(電子式のものを除く。)」を除く。)」
・第6類「安全錠」 → 「金属製安全錠(電気式のものを除く。)」
・第6類「南京錠」 → 「金属製南京錠(電子式のものを除く。)」
・第11類「業務用冷却機」 → 「業務用冷却機(冷凍機械器具)」
・第12類「風防ガラス」 → 「自動車用風防ガラス」
・第16類「指サック」 → 「事務用指サック」
・第20類「日よけ」 → 「屋内用日よけ」
・第31類「ホップ」 → 「未加工のホップ」
「菓子」については、過去には第30類に分類されており、これが「国際分類第11-2020版」から第29類と第30類に分かれ、「国際分類第12-2023版」では表示変更がされているところ、今回の改訂でさらに表示変更がされることになります。少々混乱しそうなので変更履歴を記すと、以下のようになります。
(なし)
→
「菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものに限る。)」
→
「菓子(肉・魚・果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものに限る。)」
→
「菓子(動物性食品又は野菜その他の食用園芸作物を主原料とするものに限る。)」
「菓子」
→
「菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。)」
→
「菓子(肉・魚・果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。)」
→
「菓子(動物性食品又は野菜その他の食用園芸作物を主原料とするものを除く。)」
最初の変更の時点で、もう少ししっかり検討して表示を決められなかったのかという気がしますが、ようやくすっきりした感があります。ただ、改訂後の「動物性食品」や「食用園芸作物」が、どこまでの物を含むのかという点は疑問です。
なお、今回の表示変更に関するパブリックコメントへの回答として、特許庁は以下のように述べております(※改行は当事務所による)。
変更後の第29類「菓子(動物性食品及び野菜その他の食用園芸作物を主原料とするものに限る。)」、第30類「菓子(動物性食品及び野菜その他の食用園芸作物を主原料とするものを除く。)」の表示は、第29類の類別表の注釈「第29類には、主として、動物性食品及び野菜その他の食用園芸作物であって食用のために加工又は保存加工したものを含む。」に沿ったものであり、上記変更を行うことにより、第29類に分類される商品を主原料とする菓子は第29類に属することを明確にできると考えています。
なお、国際分類第12-2025版においても、従来と同じく、29類に分類される商品を原材料として使用した菓子であっても、原材料とした商品の根本的な性質を変える程度に加工した菓子は、第30類に属します。例えば、アイスクリーム、クッキー、チョコレートは、アルファベット順一覧表に記載のとおり、第30類に属します。
また、「食用園芸作物」について、「園芸」が、「蔬菜(そさい)・果樹・庭樹・花卉 (かき) などの栽培。またはその技術。」を、「園芸作物」が、「園芸で栽培する作物。」(広辞苑第七版)を、それぞれ意味することから、「栽培する食用の蔬菜(野菜や青物)・果実などの作物」を表すものと考えます。
今般の変更について、ユーザーの皆様にご理解頂けますよう、改めて周知を図って参りたいと存じます。
4.類似群の変更
「国際分類第12-2025版」では、以下の商品の類似群が変更されています。
11A06 → 09E28 11A06
・第8類「ペディキュアセット」
・第8類「まつ毛カール器」
・第8類「マニキュアセット」
21F01 → 11A07 21F01
いずれも、複数の類似群が付与される変更がなされています。
5.削除
「国際分類第12-2025版」では、以下の商品等の削除がなされました。
・第19類「リノリウム製壁板」(07A03)
・第19類「リノリウム製タイル」(07A03)
・第19類「リノリウム製床板 」(07A03)
「リノリウム製」の商品が、第27類に採択されることになった理由によるものです。なお、上述のように、「リノリウム製壁シート」(07A03)等が、第27類に新規追加となっています。
まとめ
今回の改訂は、それほど多岐に渡るものではないと言えます。
しかしながら、「介護」に関する役務の第44類から第45類への区分変更、第29類と第30類に分かれた「菓子」の更なる表示変更については、実務上の影響が大きいと考えられますので注意が必要です。以前の願書を再利用して出願する際には、特に注意が必要でしょう。
また、「菓子」の表記については、「国際分類第12-2023版」でも一度表示変更がされているため、実務において混乱しないようにしっかり頭の整理をしておくことが必要と言えます。