美容サービスと商標登録の話
<新着コラム> 2023年1月20日
エステ、スキンケア、フットケア、ヘアカット・カラーリング、ネイルアート、まつげパーマ、まつげエクステなどの「美容サービス」は、わたしたちが豊かな生活を送っていく上でかかせないものです。テレビを付ければ、エステサロンや美容外科のCMを見ない日はないと言えるほどでしょう。
このような美容サービスは、世の中の景気が厳しくなっても、決して需要がなくなることはないはずです。自分の技術で人の役に立てる素敵な仕事であることから、起業を目指す人も少なくないと思われます。
さて、美容サービスにおいて使われるネーミングやロゴマークは、「商標」になり得ます。ですから、他の商品・サービス分野と同様に、「商標登録」が大切になります。
美容サービス業界においては、好まれるワードが比較的限定されやすいと思われます。そのため、たとえば、エステサロンのメニュー名や店舗名などが、たとえ独自に考えたものであっても、他の事業者と同じになったり、似たようなものになったりする可能性が考えられます。ご自身のブランドとして大切に育んできたネーミング等をライバルに勝手に使われないためにも、商標登録をしておくことは得策と言えるでしょう。
今回のコラムでは、このような「美容サービスに関する商標登録」について、簡単に概観してみたいと思います。
1.美容サービスに関する商標登録対象と商標の特徴
美容サービスに関する商標登録の対象、すなわち、各サービスの提供に関連して使用される商標(識別標識)には、どのようなものがあるでしょうか。
一例としてまず考えられるのは、サービス名やメニュー名、コース名です。
もっともわかりやすく独自性を出せて、差別化ができる要素と言えます。
また、サロン等の店名、会社名(コーポレートブランド名)、協会名、クリニック名などのサービス提供元を表わす名称も、商標登録の対象となるでしょう。
もちろん、これらのロゴマークやシンボルマークも対象になり得ます。
最近では、自分自身を売り込むために、パーソナルブランディングに力を入れている事業者の方も少なくありません。そのような活動の中では、たとえば「オリジナルの肩書き」が用いられることもあるかと思われます。こういったパーソナルブランディングに関連したネーミングも、商標登録の対象になり得ます。
このように、美容サービスに関する商標登録の対象は様々です。
上に挙げたものはあくまで一例ですので、ご自身の提供するサービスにおける「商標」を常に意識しつつ、必要に応じて登録を検討する姿勢が大切でしょう。
なお、美容サービス業界においては、事業者に好まれるワードが比較的限定されやすいと思われます。そのため、他の業界と比較して、自分の考えた商標と他人の考えた商標が比較的かぶりやすい特徴があると言えるかもしれません。
たとえば、「美〇〇〇」、「美肌〇〇〇」、「〇〇〇美容」といったように、「美」を含むネーミングは特に採用されやすいでしょう。また、「〇〇〇ケア」や「ケア〇〇〇」といった、「ケア」を含むネーミングも多く用いられている印象があります。他にも、「ビューティー」、「エステ」、「脱毛」等といった語を含むネーミングも比較的多いのではないでしょうか。
これらのネーミングが、元々識別力を発揮しない(業界内で一般的に使用されている)ような語であれば問題ありませんが、「商標」として十分に機能するようであれば、注意が必要です。もし、他人が商標登録をしていた場合、そのネーミングを使用することは、たとえ事情を知らなかったとしても、「商標権の侵害」となる可能性があるからです。
また、自分が考えたネーミングと同じものを、ライバルである他人も考えていた場合、両者がそれを使うことによってブランド構築が難しくなりますし、大切な顧客に混乱を生じさせるおそれもあります。
この点、商標登録をしておけば、安心・安全な商標の使用が実質的に保証されます。また、ライバルが同じ商標や似ている商標を使うのを禁止させることもできます。
このような業界の特徴も相俟って、商標登録はより重要になるとも言えます。
2.美容サービスに関する商標登録の区分
商標登録をする際、申請書となる願書には、登録をする商標とともに、具体的な商品・サービスを記載する必要があります。基本的には、その商標を実際に使用する商品・サービスや、将来的に使用する予定のある商品・サービスを指定することになります。
なお、指定する商品・サービスは、それらが分類されている「区分」とあわせて記載する必要があります。区分の数は、全部で45あります。このうち、商品の区分が第1類~第34類、サービスの区分が第35類~第45類となっています。
では、美容サービスに関する商標登録をする場合、どの区分を指定すれば良いでしょうか。
この場合、主に「第44類」を指定することになります。
「第44類」には、以下のように、多くの美容関連サービスが含まれています。
※以下で挙げる商品・サービスは、あくまで一例となります。
・理容
・エステティック美容
・フットケアを主とするエステティック美容
・ネイルケア美容
・美容師による美容
・頭髪に関する理容・美容
・ヘアカット
・ヘアカラーリング
・美顔・スキンケアを主とする美容
・ネイルアート
・爪の手入れ
・まつげパーマの施術
・まつ毛エクステンションの施術
・メイクアップ
・美容相談
・美容の指導・コンサルティング
・エステティック美容情報の提供
・リフレクソロジー
・リフレクソロジーの提供
・アロマテラピー
・アロマテラピーの提供
・マッサージ
・フットケアを主とするリラクゼーションマッサージ
・美容外科医業
・美容整形外科医業
・美容歯科医業
・歯のホワイトニング
ちなみに、第44類には「医業」も含まれています。
よって、美容サービスと言うべきではないかもしれませんが、美容に関する医業についても、同じ第44類でカバーできることになります。
次に、あわせて検討したいのが「第41類」です。
第41類には、サービスとして、美容の教授、美容に関する知識の教授、美容技術の教授、美容・理容技術に関する教育、フィットネスの教授、美容セミナーの企画・運営又は開催、エステティックに関するセミナーの企画・開催、美容コンテストの企画・運営又は開催、ヘルスクラブ又はフィットネスクラブの提供などのサービスが含まれます。
ご自身の事業内容によっては、区分の追加を検討する余地があるでしょう。
なお、商品としての「化粧品」は、「第3類」に分類されます。
美容液、美容クリーム、美顔用パックなども、この第3類に含まれます。
サービスの提供だけでなく、その商標を使用してオリジナル商品も販売しているような場合は、こちらの区分の追加も検討すべきでしょう。
もちろん、上掲の例の他にもその商標を使う商品・サービスがあれば、それらが分類される区分の追加を検討すべきなのは言うまでもありません。
3.美容サービスに関する最近の商標登録出願動向
ところで、美容サービスに関する商標登録出願は、実際にどの程度あるのでしょうか。
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を利用して簡易的に調べたところ、一昨年2021年の間に、主要な美容サービスの分類コードである「42C01」を含む第44類の区分についてされた出願は、約5,300件程度あったようです
2021年の全体での商標登録出願数は約18万件だったようですので、割合としては「平均よりも少し多い」と言えるでしょう。コロナ禍が影響したわりには、件数が特に伸び悩んでいるというわけでもなさそうです。
最後に、2021年に出願されて登録が認められた商標の一例を見てみましょう。
登録日:2022/06/16
権利者:一般社団法人 日本エステティック協会
・「メンズミュゼプラチナム」(登録6465988号)
登録日:2021/11/04
権利者:株式会社ミュゼプラチナム
・「美療ヘッドエステ」(登録6526310号)
登録日:2022/03/11
権利者:株式会社asubisou
・「星空ヘッドスパ」(登録6464921号)
登録日:2021/11/02
権利者:合同会社Dio
・「マツエク革命」(登録6483516号)
登録日:2021/12/09
権利者:株式会社オリーブ
4.おわりに
美容サービス業界においては、ライバルとの差別化や自身のブランド構築のために、独自性のあるネーミング等を用いることが少なくないでしょう。そして、それらは立派な「商標」になり得ます。
ご自身の事業を末永く継続していく中で、このような商標の安心・安全な使用を確保し、ライバルによる使用を排除するには、商標登録が有効です。
インターネット上でのマーケティングが当たり前となった現在において、商標登録の必要性は、事業の規模によっては変わらないとも考えられます。もし、美容サービスに携わる事業者の方で、商標登録を迷っているということがあれば、ぜひ積極的にご検討されることをお勧めする次第です。
なお、当事務所でも、「美容サービスに関する商標登録」についてのご相談・ご依頼を承ることが可能です。もし、商標登録でお悩み、お困りのことがあれば、お気軽にお問い合わせください。当事務所からの初回の回答は無料です。こちらのメールフォームより、まずはご連絡願います。
※弁理士の執務状況等の事情により、ご相談等をお受けできない場合もございます。予めご了承の上、お問い合わせをお願い申し上げます。
※:参考リンク(当事務所ウェブサイト)
・「商標登録とは?」
・「商標登録をしないとどうなるのか」
・「美容室・理容室のための商標登録」
・「お医者さんのための商標登録」
・「歯医者さんのための商標登録」
・「化粧品・コスメ・トイレタリーの商標登録」
・「当事務所の商標登録サービス」