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楽器と商標登録の話

<新着コラム> 2023年1月13日

我々弁理士が、代理人としてあまり取り扱う機会がない分野として、「楽器」に関する商標登録が挙げられます。おそらく、大半の弁理士は、楽器に関する商標登録を事業者から依頼された経験がないのではないかと思われます。

もちろん、だからと言って、楽器に関する商標登録が役に立たないとか、必要性が低いということを意味するわけではありません。一般的なありふれた商品とは異なり、メーカー等の事業者が多くはないというのが主な理由でしょう。

楽器も「商品」であり、そこに使われるネーミングやロゴマークは「商標」になり得ますから、他の商品・サービス分野と同様に、「商標登録」が重要であることには変わりありません。むしろ、楽器関連の商標は、「品質保証機能」という点で特に大きな役割を果たすと言えますので、これらを保護することはより大切になると考えられます。

今回のコラムでは、このような「楽器に関する商標登録」について、簡単に概観してみたいと思います。



1.楽器に関する商標登録の対象と役割

楽器に関する商標登録の対象、すなわち、楽器に使用される商標(識別標識)には、どのようなものがあるでしょうか。

一例としてまず考えられるのは、商品名(商品ブランド名、商品モデル名)でしょう。たとえば、エレキギターで言うと、「LES PAUL」とか「Stratocaster」とか「FLYING V」などが挙げられるでしょうか。

また、メーカー名(会社ブランド名)も、楽器の商品分野では重要な商標になると考えられます。たとえば、「YAMAHA」、「KORG」、「Pearl」、「ESP」などが挙げられるでしょう。商品によっては、会社ブランド名がそのまま商品ブランド名のようになっている場合もあるかと思われます。

もちろん、これらのロゴマークシンボルマークも対象になり得ます。

なお、理論的には、楽器の形状を立体商標として、商標登録の対象とすることも考えられますが、形状だけの商標ということになると、登録が認められるためのハードルはきわめて高くなると考えられます。楽器の形状の保護については、一般的には意匠登録を利用すべきでしょう。

商標登録をすることによって、商品(=楽器)について、その商標の使用を独占することができ、他人が同じ商標や似ている商標を使うことを排除することが可能になります。

ただ、一般的なありふれた商品とは異なり、楽器の商品分野では競合他社もそれほど多くはなく、また、各社がプライドやこだわりをもって自社商品を生み出していると思われることから、他社が「似たような名称にあえて寄せてくる」などという状況は、あまり考えられないように思われます。よって、どちらかと言えば、模倣品や偽造品対策の一つとして、商標登録の役割は大きくなると言えるのではないかと考えます。



2.楽器に関する商標登録の区分

 音符のイラスト

商標登録をする際、申請書となる願書には、登録をする商標とともに、具体的な商品・サービスを記載する必要があります。基本的には、その商標を実際に使用する商品・サービスや、将来的に使用する予定のある商品・サービスを指定することになります。

なお、指定する商品・サービスは、それらが分類されている「区分」とあわせて記載する必要があります。区分の数は、全部で45あります。このうち、商品の区分が第1類~第34類、サービスの区分が第35類~第45類となっています。

では、楽器に関する商標登録をする場合、どのような区分を指定すれば良いでしょうか。

まず、メインとしては「第15類」が挙げられます。
第15類は、楽器やそれらの部品・付属品を主とした分類となっています。
以下のものが第15類の商品リストとなりますので、ぜひご参照ください。

類似商品・役務審査基準〔国際分類第12-2023版対応〕(第15類)

第15類には、各種楽器楽譜台指揮棒音さ調律機などの商品が含まれます。ギター用弦ギター用ピックドラム用スティックドラム用ペダルも第15類です。楽器用ケース楽器用ストラップなどの付属品、電子楽器ドラムマシンも含まれます。(※これらは、あくまで商品の一例です。

楽器に関する商標登録をする場合は、この第15類が眼目となるでしょう。

次に、あわせて検討が必要なのは「第9類」となります。
第9類は、電子・電気機械器具などの商品が分類されている区分ですが、楽器用エフェクターギター用アンプギター用ケーブルメトロノームなどの商品はこちらの区分に含まれています。また、商品としてのソフトウェア(コンピュータプログラム)も、第9類に含まれます。

楽器そのものが含まれるわけではありませんが、自社における商標の使用状況や商品の取扱状況によっては、第15類に加えて、第9類についても指定することが望ましい場合もあるでしょう。

その他としては、「第41類」にも留意したいところです。
第41類には、サービスとして、音楽の教授電子楽器の教授楽器の貸与音楽の演奏音楽用スタジオの提供インターネットを利用して行う音楽の提供など、楽器や音楽に関連したサービスが多く含まれています。こちらも自社の事業内容によっては、追加の検討の余地があるでしょう。

なお、当然ながら、上掲の例の他にもその商標を使う商品・サービスがあれば、それらが分類される区分の追加を検討すべきなのは言うまでもありません。



3.楽器に関する最近の商標登録出願動向

ところで、楽器に関する商標登録出願は、実際にどの程度あるのでしょうか。

特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を利用して簡易的に調べたところ、一昨年2021年の間に、楽器の分類コードである「24E01」を含む第15類の区分についてされた出願は、約480件程度あったようです(そのうち、現時点で登録となっているものは約370件程度)。

2021年の全体での商標登録出願数は約18万件だったようですので、割合としてはかなり少ないと言えるでしょう。また、実際に出願・登録された商標を見てみると、楽器の事業分野とは関係のない大手企業が防衛的に出願していると思われるものも多く見受けられるため、楽器に関する純粋な商標について出願されたものとしては、もっと少ないということになります。

最後に、2021年に出願されて登録が認められた商標の一例を見てみましょう。


「TALMAN」(登録6408523号)
 登録日:2021/06/28
 権利者:星野楽器株式会社

「くるくるシロフォン」(登録6510975号)
 登録日:2022/02/09
 権利者:ヤマハ株式会社

「CUTTING V」(登録6423361号)
 登録日:2021/07/30
 権利者:ギブソン・ブランズ・インク

「Supra」(登録6535823号)
 登録日:2022/03/28
 権利者:有限会社ティーズギター

「Liano」(登録6555108号)
 登録日:2022/05/12
 権利者:株式会社コルグ


4.おわりに

楽器に関する商標登録については、その数も決して多くはなく、我々弁理士も取り扱う機会があまりないというのが実際のところです。

しかし、商標登録の重要性や必要性が高いことに変わりはなく、商標登録が望ましいことも言うまでもありません。特に、模倣品や偽造品対策の一つとして、その役割は大きくなると言えるでしょう。

実際の登録例を見てみると、とても魅力的な商標が多いことがわかります。
もし、楽器メーカーの事業者の方(特に新参の企業)で、商標登録を迷っているということがあれば、ぜひ積極的にご検討されることをお勧めする次第です。

なお、当事務所でも、日本国内のメーカー(法人)様からの「楽器の商標登録」に関するご相談・ご依頼を承ることが可能です。もし、商標登録でお悩み、お困りのことがあれば、お気軽にお問い合わせください。当事務所からの初回の回答は無料です。こちらのメールフォームより、まずはご連絡願います。
※弁理士の執務状況等の事情により、ご相談等をお受けできない場合もございます。予めご了承の上、お問い合わせをお願い申し上げます。



※:参考リンク(当事務所ウェブサイト)

・「商標登録とは?
・「商標登録をしないとどうなるのか
・「当事務所の商標登録サービス