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数字で見る商標登録と商標登録出願(2022年版)

<新着コラム> 2022年8月9日

一昨年10月のコラム昨年7月のコラムでは、2019年及び2020年にされた日本における商標登録出願や商標登録などの件数をそれぞれ考察しました。

今回は、昨年2021年の統計情報を見てみましょう。

昨年2021年は、引き続きコロナ禍にあったものの、2020年に比べれば、世の中の状況が少し落ち着いていた時期もあったように思います。経済活動の制限もやや緩和された感があり、新しい事業にチャレンジする事業者も、少なくなかったのではないでしょうか。

多くの事業者にとって、厳しい状況であったことに変わりはないとは予想されますが、このような状況下で、商標登録出願などの数にはどのような変化があったのでしょうか。

なお、今回も、統計情報については、特許庁の「特許行政年次報告書2022年版」を参考にしておりますので、より詳細を知りたい方はこちらもご覧ください。



1.2021年の商標登録出願の件数

昨年2021年の商標登録出願件数は、18万4631件でした。
2020年の18万1072件よりやや増加しており、数としては2018年と同じ程度です。

ただ、増加した件数の大部分は、「国際商標登録出願」となっているようです。
国際商標登録出願を除いた2021年の件数は16万4537件であり、2020年の16万3148件よりもわずかに増加している程度と言えるでしょう。とはいえ、現在の厳しい社会的状況を考えれば、出願件数が増加していること自体に意義はあると思います

なお、2021年の中小企業による出願は、7万9138件だったということです。
2019年の9万4532件、2020年の8万3007件と比べると、ますます減少傾向にあることがわかります。やはり、コロナ禍が中小企業に与えたダメージは少なくないようです。

とはいえ、「出願者数」自体の数は増えていて、過去5年では最高のようです。
これによれば、中小企業が厳しい状況下にあっても、商標登録まで手が回らないというわけではなく、必要最低限の商標について出願をすることによって、費用をセーブしている可能性もあると考えられるかもしれません。



2.2021年の商標登録の件数

昨年2021年の商標登録件数は、17万4098件でした。
2020年の13万5313件に比べて、約4万件も増加しています。
増加率はなんと28.7%ということです。

なお、2019年は10万9859件でしたので、2年間で約6万5000件も増加していることになります。

また、これに合わせるように、登録査定の件数も激増しています
2020年は14万6708件だったのが、2021年は18万5415件となっています。

昨年は、長期化傾向にあった審査期間も短縮されたようで、その分、処理件数が増えたのが理由の一つだという見方もできる一方、「拒絶理由通知があまり出なかった」、つまり審査で「商標登録が認められやすかった」という可能性も考えられそうです。

もしかすると、政策的な要因も幾分含まれている傾向なのかもしれませんが、このような審査期間の短縮や商標登録数の激増が、逆に審査の質の低下を招いていないことを願う次第です。



3.2021年の審判請求・異議申立ての件数

最後に、審判請求・異議申立ての件数について簡単に見てみましょう。

2021年に、商標登録出願の「拒絶査定不服審判」が請求された数は1107件でした。
2020年の請求数は742件でしたので、かなり増加したと言えます。
この数だけを見ると、審査が若干厳しくなったのかなという印象を受けます。
また、登録をあきらめない事業者が増えたのかもしれません。
なお、この10年の間では、請求件数としてはもっとも多くなっています

昨年2021年の「商標登録異議申立て」の件数は、487件でした。
2020年は360件でしたので、こちらも結構な数が増えたと言えそうです。
なお、拒絶査定不服審判と同様に、この10年の間で申立件数は最多となっています。

また、昨年2021年の「無効審判」の請求件数は、93件でした。
2020年は87件でしたので、こちらも僅かに増加しています。

以上のように、審判請求・異議申立ての件数は、2020年には全体的に減少傾向だったものが、昨年は一転して増加傾向となりました。

その理由についてはよくわかりませんが、それだけ自分や他人の商標登録にこだわりや興味を持つ事業者が増えたということであれば、良い傾向なのではないかと思います。

なお、取消審判の請求件数や、出訴件数など、その他の統計に関する情報は、前掲特許庁のウェブサイトをご参照ください。



おわりに

昨年2021年は、引き続きコロナ禍による深刻な社会的状況ではありましたが、商標登録出願の件数は微増しており、これは良い傾向であると感じました。
ただ、中小企業による出願数は減少し続けているのが、気になるところです。

商標登録件数や登録査定の件数は、2020年に引き続き激増しています。
特許庁が頑張っている成果と言えそうですが、これらが審査の質に影響を与えていないかを念のため検証をすることは、必要であろうと思われます。

審判請求・異議申立ての件数は、2020年には全体的に減少傾向だったものが、昨年は一転して増加傾向となっています。特に、拒絶査定不服審判と商標登録異議申立ての請求・申立件数が、ともに過去10年で最多となっている点に注目です。

来年こそは、コロナも落ち着いていることを祈ります。