続・コロナ禍における商標登録出願件数の考察
<新着コラム> 2021年2月12日
2021年2月現在、依然として新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっています。
残念ながら、2020年中の収束は叶いませんでした。
今でも、多くの事業者が厳しい状況下にあることが予測されます。
昨年のコラムでは、「コロナ禍における商標登録出願件数の考察」と題して、2020年7月までの我が国における商標登録出願件数を、2019年度と比較・分析してみました。
その結果、コロナ禍にあっても、「劇的に減っているわけではなく、予想していたよりも意外と多い」という点、「緊急事態宣言の解除後は件数が回復傾向にある」という点などがわかりました。
それから約半年が経ちましたが、その後はどうなったのでしょうか?
本コラムでは、昨年2020年度の1年間の我が国における商標登録出願件数について、あらためて2019年の出願件数と比較・考察をしてみたいと思います。
なお、本コラム中の分析・考察は、あくまで代表弁理士による個人的なものです。
数値などについては、誤差や不正確なものも含まれている可能性があります。
また、本コラムでは、J-PlatPatを利用して集計した件数を用いておりますので、特許庁の公表する「特許出願等統計速報」の値とは異なっております。
これらの点、ご了承いただき、あくまでご参考程度に留めていただければと存じます。
※本コラムの内容は、2021年2月12日時点の調査等に基づくものです。
1.商標登録出願件数(2020年)
J-PlatPatを用いて集計したところ、昨年2020年の1年間の商標登録出願の件数は、以下のとおりでした。 ※出願却下となった出願の件数も含まれます。
今後、まだ件数は変動することが考えられますが、出願却下の対象となるであろうU氏とB社による出願を除くと、合計で約16万3千件程度が確認されました。
緊急事態宣言が出されていた4月、5月はガクンと減っていますが、これが解除された直後の6月、7月には、かなり回復していることがわかります。
その後、8月にはいったん落ち着くものの、9月、10月と徐々に増加しています。
一方、第3波が懸念され始めた11月頃からは、再び減少傾向にあるのがわかります。
このように、昨年2020年の商標登録出願件数は、1年間を通して、ほぼ新型コロナウイルスの警戒レベルに合わせるように増減を繰り返しているように見受けられます。
2.2019年度の出願件数との比較
J-PlatPatによる集計を用いて、2020年と2019年の1年間の商標登録出願の件数を比較したものが以下となります。 ※出願却下となった出願の件数も含まれます。
今後、まだ件数は変動することが考えられますが、昨年6月~10月の(U氏とB社の出願を除いた)実質的な出願件数については、それぞれ2019年度の件数を上回っていることがわかります。
それにより、緊急事態宣言下の昨年4月、5月の件数は2019年よりも大きく減少しているものの、1年間のトータル件数としては、ほぼ2019年と同程度となったようです。これは、昨年の我が国の厳しい経済状況を考えれば、すごいことかもしれません。
この結果は、コロナ禍にあっても、事業を続けていく以上は商標登録が重要であるという点が、事業者にしっかりと周知されているからこそだと言えそうですし、まだまだ我が国の未来に希望を感じられる証左と言えるでしょう。
ちなみに、昨年の後半頃から、U氏とB社の出願件数が非常に少なくなっており、別の意味で注目されるかもしれません。
~今回のまとめ~
昨年2020年は、コロナ禍における厳しい経済情勢であったにもかかわらず、1年間のトータル件数では、2019年とほぼ同程度の商標登録出願がなされたと見受けられます。
特に、緊急事態宣言の解除直後は、劇的な出願件数の増加が見て取れます。
全体の傾向として、出願件数は、新型コロナウイルスの警戒レベルに連動して増減しているように思われますので、やはり1日も早い収束こそが、商標業界の未来を明るくするものと言えるでしょう。
(了)