コロナ禍に関連した指定商品・指定役務について
<新着コラム> 2021年1月29日
依然として、新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るっています。
多くの事業者がダメージを受け、厳しい社会状況が続いている中、
感染症対策の商品やサービスを提供し、頑張っている企業が見受けられます。
また、新たにコロナ対策関連事業へのチャレンジを考える企業もあるでしょう。
非常事態下ではありますが、このように、
新商品や新サービス、新事業を展開する際には、やはり商標登録が大切となります。
今回のコラムでは、こういった企業等が、コロナ禍に関連した商品やサービスについて商標登録を受けようとする際に、役に立つかもしれない情報を述べたいと思います。
1.商標登録では、指定商品・指定役務の記載が重要
まずは、商標登録について、ごく簡単にご説明します。
商標登録は、「商標」と「商品・サービス」をセットで行なうものです。
商品やサービスごとに商標の権利があって、保護が受けられるイメージです。
商標登録をしたい場合は、願書を作成して特許庁に提出(出願)しますが、
ここには、保護を受けたい商標や商品・サービスを記載するわけです。
願書に記載する商品・サービスのことを、「指定商品」、「指定役務」といいます。
「指定商品」、「指定役務」として記載すべき商品やサービスは、
商標実務上、45のクラス(区分)に分かれています。
願書には、このクラスについても正しく記載しなければなりません。
また、商品やサービスは、具体的に記載する必要があります。
ですから、商標登録出願をしようとする際には、
(1)商標を保護したい商品やサービスがどのクラスに分類されるのか、
また、(2)実際にどのような表記でそれらを記載するべきか、
という点を慎重に検討する必要があるのです。
これらの点を検討する過程こそが、商標登録のキモとも言える部分であり、
特にはじめての方々には、難しく感じられるところかと思われます。
2.コロナ禍に関連した指定商品・指定役務の表記
そこで、今回は、コロナ禍に関連した商品やサービスについて、願書への記載例を掲載したいと思います。なお、特許庁でもコロナ禍の影響にかんがみ、「最新の商品・役務名情報」のページを公開しておりますが、下記はこれらの情報も含めております。
感染症対策の商品・サービスを提供して頑張っている企業様や、コロナ対策関連の新事業にチャレンジしようと考える企業様が、自社による商標登録出願をお考えの際、ご参考になれば幸いです。なお、今回は、テレワークやデリバリー関連の商品・役務には言及しておりません。
※ご注意※
・以下は、2021年1月現在の情報に基づくものです。
過去に特許庁で認められた区分及び商品・役務の表記となっておりますが、
適宜変更が生じる場合もございます。実際に商標登録出願をお考えの際は、
事前にご自身でも十分ご確認ください。
・商品の右の()の中にあるのは、類似群コードです。
実務家の便宜のために掲載しているものであり、願書には記載しません。
・下記の商品・役務の表記はあくまで一例です。
第3類
- せっけん類(04A01)
- クリーム状のハンドソープ(04A01)
第5類
- 衛生マスク(01C01)
- 使い捨て衛生マスク(01C01)
- 立体型衛生マスク(01C01)
- 携帯用衛生マスク専用ケース(01C01)
- アルコールを含浸した消毒綿(01C01)
- 消毒用アルコール(01B01)
- 医療用せっけん(01B01)
- 消毒用せっけん(01B01)
- 抗ウィルス剤(01B01)
第9類
- 保護フェイスマスク(医療用のものを除く。)(17A05)
- 飛沫防止用フェイスシールド(医療用のものを除く。)(17A05)
第10類
- 医療用マスク(17A05)
- 医療用保護フェイスマスク(17A05)
- 医療従事者用マスク(17A05)
- 院内感染防止用マスク(17A05)
- 抗菌保護のための医療用フェイスマスク(17A05)
- 体温計(10D01)
- 医療用パルスオキシメーター(10D01)
第11類
- 消毒液自動噴霧式手指消毒器(09E99 09G99 11A07)
- 業務用スタンド型消毒液自動噴霧式手指消毒器(09E99 09G99)
- 殺菌効果を有する生成水を噴霧する業務用手指消毒器(09E99 09G99)
- 消毒装置(09E11 09G57 09G62)
- 医療用消毒装置(10D01)
第16類
- ウェットティッシュ(19B38)
- ポケットウェットティッシュ(19B38)
- アルコールを含浸させてなるウェットティッシュペーパー(19B38)
- 紙製ウェットシート(19B38)
第18類
- 携帯用衛生マスク及び小物入れケース(21C01)
- 置き型の革製衛生マスク収納ケース(19B99)
第20類
- 消毒液ボトル置き用スタンド(20A01)
- 消毒液ボトルを固定する機能を備えた消毒液ボトル置き用スタンド(20A01)
- 業務用の手指先除菌剤を配置して使う足踏み式噴霧用スタンド(20A01)
- 置き型の木製又はプラスチック製の衛生マスク収納ケース(19B99)
第21類
- ウィルス対策用のつり革に直接手を触れずにつかまるための抗菌性補助具(19B99)
- ウィルス対策用のドアに直接手を触れずに開けるための抗菌性補助具(19B99)
- ウィルス対策用のボタンに直接手を触れずに押すためのスティック(19B99)
- ウィルス対策用のボタンに直接手を触れずに押すための棒状補助具(19B99)
- 接触感染防止用のつり革把持補助用フック(19B99)
- 接触感染防止用のつり革把持補助具(19B99)
- 接触感染防止用のボタン押下補助具(19B99)
- 接触感染防止用のボタン押下補助用スティック(19B99)
第37類
- 消毒(37H01 37H02 37H03 37H99)
- 建物内部の消毒・殺菌(37H02)
- 病院施設の消毒・殺菌(37H02 37H99)
第42類
- 医療に関する研究(42Q01)
- 医薬品の試験・検査又は研究・開発(42Q01)
第44類
- ウイルス感染症の診断(42V02)
- ウイルス感染症の治療(42V02)
似たような商品や役務が、別々のクラスに分類されている場合もあります。
また、商品や役務の性質によっては、どこに含まれるか難解なものもございます。
貴社が取り扱う商品・役務が含まれるクラスを取り違えないよう、ご注意ください。
わからない場合は、特許庁に問い合わせをされることをオススメいたします。
なお、弁理士に依頼すれば、願書の作成を始め、出願手続から登録完了まで一括してお任せいただけますので、自信や時間がない場合は、ぜひご検討ください。
3.おわりに
コロナ禍による厳しい社会状況は、今後もしばらく続くと思われます。
業種によっては、新しい事業や業務内容への転換を余儀なくされる場合もあるかもしれません。
しかし、そこに商品やサービスが存在する以上、たとえ非常事態下であっても、商標登録の重要性は変わりません。むしろ、皆が控えがちな時だからこそ、商標登録がビジネスチャンスにつながる可能性もあるかもしれません。
厳しい社会情勢なのは十分承知してはおりますが、新しい商品やサービスを取り扱う際や、新しい事業を始める際には、ぜひ商標登録をご検討いただければと思います。