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コロナ禍における商標登録出願件数の考察(前編)

<新着コラム> 2020年5月20日

新型コロナウイルスの蔓延により、世界的規模で大変なことになっています。

日本でも、4月7日に緊急事態宣言が発令され、16日には全国に拡大されました。
5月20日現在、幸いにも全国の感染者数は日々減少しており、緊急事態宣言の継続は残すところ8都道府県となっています。

しかしながら、長く続いた外出自粛、営業自粛の影響により、経済は甚大なダメージを受け、事業者は様々な深刻な問題に直面しているのが現状と言えるでしょう。

ところで、商標登録は、事業者のためにあるものです。
コロナ禍において、商標登録出願にはどのような影響があったのでしょうか?
やはり、事業者による出願件数は、大幅に減少してしまっているのでしょうか?

今回は、コロナ禍における商標登録出願件数について、
前・後編の2回に分けて、考察してみたいと思います。

なお、本コラムの分析・考察は、あくまで代表弁理士による個人的なものです。
数値などについては、誤差や不正確なものも含まれている可能性があります。
この点、ご了承いただき、あくまでご参考程度に留めていただければと存じます。
※本コラムの内容は、2020年5月20日時点の調査等に基づくものです。


1.商標登録出願件数の比較(2月~3月)

2020年5月20日現在、J-PlatPatでは、今年の4月中旬頃までに出願された商標データが検索可能です。よって、緊急事態宣言後の出願件数の状況については、現時点では分析が困難です。

そこでまずは、コロナウイルスが国内でも特に大きく話題になり始めた2月~3月の出願件数について、見てみたいと思います。

J-PlatPatで検索したところ、2020年2月1日~3月31日の商標登録出願件数は、24,235件だったようです。では、昨年(2019年)の同期間の件数はどうだったかと言うと、こちらは29,150件だったようです。

上記件数には出願却下になったものも含まれますので、実質的な件数は多少異なるとは思いますが、それでも2割程度の減少が見受けられることがわかります。

やはり、先行してコロナウイルスが蔓延した外国からの出願件数の減少が影響したのでしょうか。

なお、同様にJ-PlatPatで検索したところ、2020年4月1日~4月15日の商標登録出願件数は、5,870件である一方、昨年(2019年)の同期間の件数は8,015件だったようです。こちらは約3割の減少であり、この時期、国内におけるコロナ禍の影響が特に顕著になってきたと考えられるように思います。
今後判明するであろう、4月15日以降の出願件数の遷移が気になりますね。

このように見てみますと、コロナ禍において、必ずしも劇的に出願件数が減っているというわけではないようです。正直なところ、「予想していたよりも意外と多い」という印象を受けました。


2.称呼に「マスク」を含む出願件数の比較

コロナ禍においては、マスク不足が大きな社会問題となっています。
このような状況下で、ビジネスとしてマスクの取扱いを新たに始める事業者が現れることは容易に予測されます。

それでは、マスクに関連する商標登録出願件数も増えているのでしょうか?

ここで、J-PlatPatで、2020年2月1日以降に出願され、商標に「マスク」の称呼を含み、かつ、商品「衛生マスク」の類似群コードである「01C01」を指定している商標登録出願件数を調べてみたところ、84件がヒットしました。ただし、この中には、追って出願却下となるであろう、不適切と思われる出願も約30件含まれていました。

一方、昨年(2019年)はどうだったかと言うと、J-PlatPatで同じ条件で検索したところ、1年間で50件程度であったことが判明しました。

つまり、「マスク」の称呼を含む商標については、今年は約2か月ちょっとの間に、昨年の1年分に匹敵する数の出願があったことがわかります。商標登録出願は、やはり社会状況を大きく反映するものということがよくわかりますね。


3.称呼に「コロナ」を含む出願件数の比較

次に気になるのは、やはり「コロナウイルス」に関連した商標登録出願でしょう。

さすがにイメージが良くありませんので、そのまま商品やサービスの商標にすることはないでしょうが、「コロナ」の文字を含む商標の登場は、容易に予測できます。

そこで、J-PlatPatで、2020年1月1日以降に出願され、商標に「コロナ」の称呼を含む商標登録出願件数を調べたところ、40件がヒットしました。

これらの商標をざっと確認したところ、やはり「コロナウイルス」に由来する商標のようでした。中には、同じネーミング発想なのか、まったく同じ名称の商標が複数の企業によって出願されているものもあるようです。

ちなみに、昨年(2019年)は、商標に「コロナ」の称呼を含む商標登録出願件数は、1年間で14件程度だったようです。もちろん、これらは「コロナウイルス」には由来しない、別の「コロナ」に関する商標であると思われます。

この40件という数字は、はたして多いのか?少ないのか?

現時点で検索できる商標データが4月中旬までのものですので、今後、ますます増えていくのかどうか、気になるところです。


~今回のまとめ~

コロナ禍の影響で、商標登録出願件数はやはり減少しているようです
この事実は、ある意味で当然の結果かもしれません。
しかしながら、「予想していたほど減ってはいない」という印象も受けます。

また、「マスク」や「コロナ」の文字を含むような商標については、
社会状況を反映してか、出願件数の割合がかなり増えていると考えられます。

コロナ禍の影響で、多く事業者は甚大なダメージを受けています。
やむなく廃業や閉店に追い込まれた事業者が少なくはない一方で、
これを機に、新しい事業や、新しい商品・サービスにシフトした事業者も、
それなりに多いのではないか
、ということが窺われます。

ただ、より気になるのは、緊急事態宣言後の商標登録出願件数かと思います。
これについては、数か月後、J-PlatPatにデータが蓄積された頃合いで、
また同じように当サイトのコラムにて考察してみたいと思います。