【重要】ファストトラック審査の運用変更
<新着ニュース> 2020年1月24日
特許庁より、「ファストトラック審査」の運用変更が発表されました。
→『事業計画を立てやすい迅速な商標審査の実現
~ファストトラック審査の運用変更~』
今回の運用変更は、商標登録実務への影響が比較的大きいと考えられることから、当サイトでも注意喚起として、あらためてお知らせいたします。
なお、ファストトラック審査の詳細については、以下をご参考ください。
■【重要】商標審査で「ファストトラック審査」が試行開始
1.運用の変更点
これまでは、ファストトラック審査の対象となった場合、
審査期間が「通常より約2か月早く」なるというものでした。
運用の変更後は、これが「出願から約6か月」になるということです。
現在の商標登録出願の審査期間は、概ね出願から約1年となっています。
よって、従来の運用ですと、ファストトラック審査の対象となっても、審査期間は「約10か月」であるところ、変更後の運用では「約6か月」になるということです。
今回の運用変更によって、ファストトラック審査対象の出願であれば、実質的に約4か月の審査期間の短縮が期待できることになります。また、ファストトラック審査の対象外の出願と比較すると、審査期間は「約半分」になると言えます。
今回の運用変更に伴い、ファストトラック審査の対象となるための条件には変更はありませんので、ユーザーにとっては歓迎すべきニュースと言えるでしょう。
2.運用変更の適用時期
「2020年2月の出願から新たな運用の対象とします」とされています。
ということは、ファストトラック審査の対象条件を満たした出願をする場合、1月31日に出願をすれば審査期間は「約10か月」となるところ、2月1日に出願をすると審査期間が「約6か月」になるという現象の発生が予測されます。
この場合、出願日を遅らせれば審査期間が4か月短くなるというのは魅力的ですが、あくまで商標登録は「先願主義」が原則であることには注意が必要です。
出願を遅らせたために商標登録自体ができなくなっては、何の意味もありません。
この点については、出願日を遅らせるリスクと、審査期間を短縮できるメリットのバランスを比較考慮した上で、どのように対応するかを検討するべきでしょう。可能であれば、出願日は遅らせずに「早期審査」の申請をするという手段もあります。
3.コメント
ファストトラック審査の試行開始当時は、通常の審査期間は約9か月でした。
よって、ファストトラック審査の対象となっても、審査期間は約7か月になる程度で、正直なところ、あまりメリットは感じられませんでした。
しかし、最近では全体的に審査期間が延びており、通常の審査には約1年がかかるため、今回の運用変更によって、ファストトラック審査による審査期間が「約6か月」に半減するというのは、権利化を急ぎたいユーザーにとっては大きなメリットになるでしょう。
ただ、だからといって、ファストトラック審査の対象とするために、あえて願書への指定商品・指定役務の記載を簡素化・手抜きするということでは、本末転倒です。適切な商標登録をして瑕疵のない商標権を取得するため、「類似商品・役務審査基準」等に掲載のない具体的な商品・役務の記載や、積極表示が必要不可欠ということであれば、こちらが断然優先すべき事項となります。
この点は、絶対に間違えてはいけないポイントです。
ところで、今回の運用変更をしたことが原因で、通常の審査期間がさらに遅れるということであれば、それはそれで本末転倒だと思います。早期審査の申請をせずに、あえて通常の審査期間となる出願をしている事業者というのは、商標制度の枠においては、むしろある程度の余裕をもって「きちんと商標対策をしている」と言えます。今回の運用変更が、このような事業者の不利益には繋がらないよう、特許庁には十分な配慮をしていただきたいと思います。
4.関連リンク
■「ファストトラック審査」(特許庁ウェブサイト)
■「ファストトラック審査に関するQ&A」(特許庁ウェブサイト)