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商標登録とドメイン登録のちがい

<新着コラム> 2019年7月24日


商標登録とドメイン登録はまったく違います!

事業を始めると、独自のウェブサイトやメールアドレスが必要になります。その際、ドメイン登録を行なって、たとえば、「〇〇〇.com」や「〇〇〇.jp」といった独自のドメインを取得し、自社で利用できるように手配することになります。

ドメイン登録は、(ドメインによっては、条件等があるものもありますが)いわゆるレジストラ(登録事業者)に申し込めば、かなり簡単に登録完了することができます。早ければ、申込みの翌日には登録が完了し、独自ドメインの利用開始ができることも少なくありません。

このドメイン登録は、事業の立ち上げ時に行うことが多いのではないでしょうか。 すると、経営者の方が商標登録についても考えていたとしても、順序としてはドメイン登録が先ということがほとんどかと思います。

そのためか、経営者の方の中には、商標登録もドメイン登録のように、「かんたんで早くできる」と誤解されている方も少なくないようです。

しかし、商標登録とドメイン登録はまったく違います。
ここを勘違いしていると、後で大変な目に遭う可能性があるほどです。
また、このような勘違いをしていると、商標登録を依頼する特許事務所を決める際に、手軽さや料金の安さだけを基準とした選び方をしてしまうおそれがあります。

そこで、今回のコラムでは、商標登録とドメイン登録の共通点と異なる点を、簡単にご説明いたします。


1.商標登録とドメイン登録の共通点

「商標登録とドメイン登録はまったく違います!!」とは言いましたが、制度的には共通している点もあります。まずは、その点について少し触れたいと思います。

まず、商標登録もドメイン登録も、ともに「早い者勝ち」のシステムです。
同じ商標、同じドメイン名については、原則として申請順に登録が認められます。

ただし、商標登録の場合は、商品やサービスとの共通性も考慮されます。
商標が同じでも、商品やサービスの分野が違えば、登録が認められる場合もあります。

一方、ドメイン登録も、トップレベルドメイン(たとえば、「com」とか「jp」)が異なれば、〇〇〇の部分が同じであっても認められることになります。

また、商標登録もドメイン登録も、「更新」ができる点で共通すると言えます。
ただし、後述のように、更新をする対象の性質としてはかなり異なります。

その他、細かい点での共通点は他にもありますが、ここでは割愛します。


2.商標登録とドメイン登録の異なる点

それでは次に、商標登録とドメイン登録の異なる点を見てみましょう。
いろいろとありますが、主な相違点を何点か挙げてみます。


(1)商標登録は「権利」(商標権)を取得できる

商標登録をすると、「商標権」という強力な権利を取得することができます。
権利者は、これを財産権の一種として、利用・活用等をすることができます。

一方で、ドメイン登録は、一定期間に限ってドメイン名の管理権限の委任を受けるにすぎません。ドメインそのものが登録者の所有物になるというわけではないのです。

大雑把に言ってしまえば、「権利取得」と「リース」ほどの違いがあると言えます。
商標登録とは、そのような点で、ある意味「重みがある」ものなのです。


(2)商標登録は申請内容を慎重に検討する必要がある

商標登録もドメイン登録も、申請が必要という点では共通しています。

しかし、商標登録により発生する「商標権」の権利範囲は、申請書の内容に基づいて定まります。申請書には、その商標を使う商品・サービス(保護をしたい商品・サービス)や、他人に使われたくない商品・サービスを書くことになりますが、具体的には、この書き方次第で、「強い商標権」にも「弱い商標権」にもなり得るのです。

せっかく商標登録ができても、申請書の書き方がまずいと「まったく意味のない商標登録」となることも少なくありません。そして、専門知識のない一般の経営者の場合、このような意味のない商標登録をしている事実に気付いていないことがほとんどです。

ですから、商標登録を申請する場合には、申請内容について慎重に検討・考慮を重ねた上で、これを決めることが大切です。

一方、ドメイン登録の申請内容は、せいぜいドメイン名と登録者情報くらいでしょうから、申請時に「検討したり、考えたりする作業」は、まず必要ないでしょう。


(3)商標登録は特許庁による実体的な審査がある

商標登録は、商標権という強力な権利を生じるものですから、これを認めるかは厳格に判断される必要があります。そのため、商標登録は、「特許庁」による実体的な審査をパスした場合に限って認められます。
商標登録は、申請すれば必ず認められるというものではないのです。

なお、審査の完了までには、最近では約7か月~10か月程度かかっています。

一方、ドメイン登録の場合、せいぜい方式的な審査だけと言えるでしょう。
レジストリにもよるでしょうが、1週間もあれば登録は完了すると思われます。


(4)商標登録は先に似ている商標が登録されていてもNG

商標登録もドメイン登録も、先にまったく同一のものが登録されている場合には、「早い者勝ち」のシステムによって登録できない点で共通していました。

商標登録は、これに加えて、先に他人の「似ている商標」が登録されている場合も、登録が認められません。一方、ドメイン登録では、(制度的には)先に登録された「似ているドメイン」があるかどうかまではチェックされません。

ですから、商標登録を申請する場合は、申請前に、あらかじめ似ている商標が登録されていないかを調査することが重要となります。申請した後で登録できなかった場合、費用が無駄になりますし、状況によってはその商標を使うことが他人の商標権を侵害することになるからです。

しかし、商標が「似ているか似ていないか」の判断は実は非常に難しいものであり、絶対的な基準が存在しているわけではありません。専門知識のない一般の経営者の方の場合、この判断は感覚に頼るほかなく、困難と言わざるを得ません。

なお、商標登録が認められるかは、商標自体が似ているかどうかの点だけではなく、商品やサービスの共通性も考慮されます。


3.おわりに ~専門家としての弁理士の役割~

いかがでしたでしょうか。「商標登録とドメイン登録はまったく違う!」という点について、よくご理解いただけたのではないかと思います。性質ももちろん違いますが、やはり商標登録には「重みがある」と言えます。

さて、商標登録は、われわれ弁理士のいる「特許事務所」にご依頼をいただけます
これは、ドメイン登録を登録事業者に申し込むようなイメージかもしれません。

ただ、上述のように、商標登録は申請書の書き方によって、「強い商標権」にも「意味のない商標権」にもなり得ます。その点、専門家である弁理士にご依頼をいただければ、依頼者の事業内容・商品・サービス等などの詳細をヒアリングした上で、適切な申請内容を検討し、「強くて、使える商標権」を取得するためのアドバイスや申請書作成をお任せいただけます。

また、先に「似ている商標が登録されていないか」を調査したり、発見された商標が「似ているかどうか」を判断したりするサポートも可能です。

このように、商標登録の申請は単なる申請とは異なります。
依頼人と特許事務所の弁理士は、相談や打ち合わせをした上で、協働して適切な商標登録の成功を目指すことになります。ですから、弁理士は通常、ご依頼の1件1件に相応の時間・労力をかけますので、「それなりのご請求」が生じるのは自然なことです。

ただ、最近では、ドメイン登録の申込みを受けるようなやり方で、商標登録の依頼を格安料金で受けている特許事務所をネット上で見かけます。「手軽に、安く。」というのは、たしかに依頼人にとってはメリットが大きいのかもしれません。しかし、上述のように、商標登録はドメイン登録のような単なる申請ではありません。この点を誤解してしまうと、「意味のない商標登録」をしてしまったり、後々トラブルを生じてしまう可能性があるため、注意が必要です。繰り返しになりますが、自分が「意味のない商標登録」をしていることには、なかなか気付かないものなのです。

商標専門家の立場としては、このような方法で商標登録のご依頼を受けることには、やはり疑問を感じます。なぜなら、そこには「弁理士だからこそできるサービス」の過程が抜け落ちているからです。中には、自分たちの利益と労力軽減を優先したような、正直「お粗末」としか言えないものも存在しています。

もちろん、こういったサービスを利用するかどうかは依頼人の自由です。
しかし、これまで述べたような事情があることも忘れないでほしいと思います。
どのような特許事務所に商標登録を依頼する場合でも、その際、当該サービスが「どこまでカバーしてくれるのか」をしっかり確認することが必要でしょう。

このような時代ですから、ある程度は「自分の身は自分で守る」視点が必要です。