採用できない商品・役務名の公表(2019年1月版)
(2019年1月10日)
<新着ニュース> by 永露祥生
特許庁で随時取りまとめられている、「採用できない商品・役務名の一覧」の最新版が、この度公表されました。
※「採用できない商品・役務名について」(特許庁ウェブサイト)
商標登録出願の願書に記載する指定商品・指定役務については、区分が異なっていたり、内容や範囲が不明確であったりする場合、補正指令がなされます。
この際、うまく意図するように補正できれば大きな問題とはなりませんが、対応や再審査の時間が余計にかかることになるため、商標登録までの期間が延びてしまいます。また、意図するように補正できない場合や、補正指令はされなかったけれども実際には意図する商品・役務を指定できていなかった場合などは、「欠陥のある商標登録」になってしまう可能性があります。
ですから、出願当初より、適切な指定商品・指定役務を願書に記載することは非常に重要となります。特許庁の「採用できない商品・役務名の一覧」は、いわば「不適切な記載例」をまとめているものですから、この点で非常に役立ちます。
そこで、今回は、2019年1月に公表された「採用できない商品・役務名の一覧」の中で、実務上頻出すると思われるもの、特に注意が必要なものを、当職がピックアップしてご紹介いたします。
採用できない商品・役務名の一例
当職がピックアップした「採用できない商品・役務名」の一例をご紹介いたします。
※矢印(→)の後が、それに替わる適切な表示となります。
なお、2019年1月時点での情報であって、今後運用が変更となる可能性があります。情報はあくまで参考に留めて、実際に願書を作成する際には、「商品・役務名検索」等であらためてご確認されるよう、お願い申し上げます。
→
・「入浴剤(医療用のものを除く。)」(第3類)
・「医療用入浴剤」(第5類)
→
・「化粧用クリーム」(第3類)
・「医療用の化粧用クリーム(医療用化粧品)」(第5類)
<コメント>
現在、「薬用〇〇〇」という指定商品の表示は認められません。
→
・「せっけん」(第3類)
・「せっけん(医療用のものを除く。)」(第3類)
・「医療用せっけん」(第5類)
<コメント>
現在、「薬用〇〇〇」という指定商品の表示は認められません。
→ ・「医療用せっけん」(第5類)
<コメント>
現在、「薬用〇〇〇」という指定商品の表示は認められません。
→ ・「サプリメント」(第5類)
→ ・「未記録のCD」(第9類)
→ ・「未記録のDVD」(第9類)
→ ・「医療用消毒装置」(第11類)
<コメント>
2017年より、区分が変更となっています。
→ ・「業務用テレビゲーム機」(第28類)
→
・「テレビゲーム機用メモリーカード」(第9類)
・「液晶画面ゲームおもちゃ用メモリーカード」(第9類)
・「家庭用テレビゲームおもちゃ用メモリーカード」(第9類)
<コメント>
ゲーム機本体は第28類であり、メモリーカードはその付属品とも言えそうですが、「第9類」とされています。
→
・「テレビゲーム機用メモリーカード」(第9類)
・「液晶画面ゲームおもちゃ用メモリーカード」(第9類)
・「家庭用テレビゲームおもちゃ用メモリーカード」(第9類)
<コメント>
ゲーム機本体は第28類であり、メモリーカードはその付属品とも言えそうですが、「第9類」とされています。
→ ・「コーヒー入りの乳飲料」(第29類)
<コメント>
若干ややこしいですが、「ミルクコーヒー」は第30類になります。
→ ・「ビール風味のアルコール分を1%未満含有してなる清涼飲料」(第32類)
→ ・「ビール風味の麦芽発泡酒」(第32類)
→
・「中国紹興産の醸造酒」(第33類)
・「中国紹興地方由来の製法を用いた○○産の醸造酒」(第33類)
※○○部分には、具体的な地名を記載します。
→ ・「求人情報の提供」(第35類)
→
<例>
・「広告・商品見本市等の開催又は商品販売促進のための企画・実施」(第35類)
※他人の商品の売り込みを行う役務の場合。自己の商品の売り込みであれば、役務には該当しないため、適切な類に具体的な商品を記載する。
(商品情報の提供)
→
<例>
・「商品の販売に関する情報の提供」(第35類)
・「販売を目的とした、各種通信媒体による商品の紹介」(第35類)
※事業者向けの情報の提供(事業者支援)の役務の場合
・「消費者のための商品購入に関する助言と情報の提供」(第35類)
※消費者向けの情報の提供の役務の場合
(人材派遣に関する情報の提供)
→
<例>
・「人材派遣による○○に関する情報の提供」(※各該当区分)
※「人材派遣」は役務の提供手段であるため、それ自体を主体とする役務表示は認められない。○○部分には、各類で採用できる具体的な役務を記載する。
・「人材派遣事業の管理に関する情報の提供」(第35類)
※提供する情報の内容が事業管理を意図するものである場合
→
<例>
・「人材派遣による○○」(※各該当区分)
※「人材派遣」は役務の提供手段であるため、それ自体を主体とする役務表示は認められない。○○部分には、各類で採用できる具体的な役務を記載する。
・「人材派遣事業の管理」(第35類)
※事業管理を意図するものである場合
(ニュース情報の提供)
→
・「新聞記事情報の提供」(第35類)
・「報道をする者に対するニュースの供給」(第38類)
・「放送番組の配給」(第41類)
→
<例>
・「企業の業務提携・合併及び買収の斡旋」(第35類)
・「有価証券の引受け」(第36類)
・「有価証券の売買」(第36類)
→
・「電子計算機の操作に関する運行管理」(第35類)
・「サーバーコンピュータの修理又は保守」(第37類)
・「電子計算機のプログラムの設計又は保守」(第42類)
→ ・「硬貨作動式洗濯機の貸与」(第37類)
→
・「インターネットによる影像及びこれに伴う音声その他の音響を送る放送」(第38類)
・「インターネットによる音声その他の音響を送る放送」(第38類)
→ ・「インターネットによる音声その他の音響を送る放送」(第38類)
→ ・「電子メール通信」(第38類)
→
・「旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ」(第39類)
・「宿泊施設の提供の契約の代理・媒介又は取次ぎ」(第43類)
<コメント>
旅行のチケット(輸送)の手配は第39類、宿泊施設の手配は第43類になります。
→
・「写真データの修正・合成・補正」(第40類)
・「画像データのデジタル画像処理」(第41類)
→
・「アニメーション映画の制作・上映又は配給」(第41類)
・「アニメーションテレビ放送番組の制作」(第41類)
(イベント用施設の提供)
→
・「イベントのための運動施設の提供」(第41類)
・「イベントのための娯楽施設の提供」(第41類)
・「多目的ホールの提供」(第43類)
→
・「硬貨投入式写真シール作成機によるデジタル写真画像の修正・合成・補正」(第40類)
・「編集機能を有する硬貨投入式写真シール作成機によるデジタル写真の撮影」(第41類)
→ ・「書籍の制作」(第41類)
→
<例>
・「医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究に関する情報の提供」(第42類)
(ゲーム用プログラムの提供,ゲームソフトウェアの提供,ゲーム用ソフトウェアの提供,ゲーム用アプリケーションソフトウェアの提供)
→
・「オンラインゲームの提供」(第41類)
・「家庭用テレビゲームのゲームプログラム・業務用ゲーム機のゲームプログラムの設計・作成」(第42類)
(コンピュータデータベースへのアクセスの場の提供)
→ ・「コンピュータデータベースへのアクセスタイムの賃貸」(第42類)
→ ・「インターネットにおける検索エンジンの提供」(第42類)
→ ・「保養所・療養所における治療・介護・栄養の指導」(第44類)
コメント
以上、一見すると適切な商品・役務の記載に思えるようなものでも、採用できないとされているものが多々あるのがわかります。
また、一見すると1つと思われる役務が、複数の区分に属する複数の役務に分かれているケースもあり、商標登録による保護や権利範囲にモレのないよう注意が必要です。
弁理士(ときには商標弁理士)でも、誤って記載しているのを見かけますので、注意してください。基本的には役務が多いですが、商品であれば、「薬用〇〇〇」といった商品や、酒類・アルコール飲料類の場合の記載に、特に注意したいところです。