お見積り依頼時にご注意いただきたいこと
<新着コラム> 2018年5月17日 by 永露祥生
最近、メールフォームにて、多くのお問い合わせをいただいております。
その中でも、商標登録費用や商標調査費用のお見積りのご依頼が多くなっております。
ご多忙の中のお問い合わせ、本当にありがたいことです。
一方で、いただいた情報からは、具体的な金額の「お見積りができない」ということも少なくありません。その際は、理由をご説明した上で、再度必要な情報をご教示いただけるようお願いしておりますが、面倒と思われてしまうのか、お返事をいただけない場合があります。
この「お見積りができない」理由は、弊所に限ったものではありません。
どのような特許事務所に依頼した場合でも、不可能です。
むしろ、同じ条件下でお見積りを出せる特許事務所があれば、疑うべきです。
お見積りと実際に必要となる費用が、大きく異なる可能性があるためです。
そこで、「商標登録費用のお見積もりご依頼の際に、ご注意いただきたいこと」をご説明いたします。特許事務所に依頼せず、ご自身で対応される場合でも必要となる知識ですので、ぜひお読みいただければと存じます。
1.費用は、願書に記載する商品・サービスの区分の数で決まります
ご存じの通り、商標等登録をするには、願書を特許庁に提出します。
そして、所定の審査にパスすることで、登録が認められます。
願書には、商標登録を受けたい商標と、その商標を保護したい商品・サービス等を記載します。ここに記載する商品・サービスは、基本的には、実際に商標を使うもの、将来的に商標を使う可能性があるものとなります。たとえば、「紫苑」という「おにぎり」の商品名について商標登録をしたいのであれば、商品である「おにぎり」を記載します。
ところで、このように記載する商品やサービスは、実務上、その用途や種類によって、45のクラス(区分)に分類されています。たとえば、化粧品は第3類、薬剤は第5類、被服は第25類、おもちゃは第28類・・・といった具合です。
具体的には、以下のように大きく分類されております。
(※特許庁「商品・役務審査基準」により抜粋)
※各区分に分類されている、より具体的な商品・サービスについては、特許庁ウェブサイトの「類似商品・役務審査基準」をご覧ください。
願書には、この区分とともに、そこに分類される具体的な商品やサービス(指定商品・指定役務)を記載することが必要です。
上述の「紫苑」なら、「おにぎり」は第30類の区分に分類されますので、願書には第30類「おにぎり」と記載するわけです。一方、おにぎりだけでなく、「梅酒」にも「紫苑」を使うとします。その場合、「梅酒」は第33類の区分に分類されますので、願書には第30類だけでなく、第33類「梅酒」も追加する必要があります。
すると、商標登録をする区分の数としては、前者であれば、第30類の「1区分」、後者であれば、第30類と第33類の「2区分」となるわけですね。
そして、商標登録に必要な費用は、この区分の数によって決まります。
つまり、願書に記載する区分が増えるほど、必要な費用が増えるということです。
基本的には、願書に記載する商品・サービスの量に比例することが多いと言えます。
費用お見積りのためには、「願書にいくつの区分を含めるか」が重要となるわけです。これがわからない状況では、正確なお見積りをお出しすることができないのです。
2.お見積りには、具体的な商品・サービスの情報が必要です
上述の通り、商標登録費用お見積りのためには、「願書にいくつの区分を含めるか」が重要となります。逆に言えば、これが明確であれば、お見積りは可能です。
たとえば、
このようなご依頼であれば、区分の数が明確になりますので、具体的な金額をご提示することが可能です。
しかし、このようなご依頼は、商標登録実務に慣れている方だけが可能でしょう。
そもそも、「区分」について知らなければ不可能です。
よって、商標登録が初めてとなる多くの方々には、実質的に難しいと言えます。
そのため、多くの場合は、願書に記載する区分の数を割り出すために、登録対象となる商品・サービスを精査するという作業が必要となります。
そこで、弊所のメールフォームでは、その商標を使う商品やサービスの情報をご入力いただくよう、お願いしております。弊所にて、ご教示いただいた商品やサービスがどの区分に属するかを精査した上で、区分の数を割り出し、具体的な費用の金額をご提示しております。(したがって、お見積りをお出しするだけでも、実はそれなりの労力や時間を要しているのですが、一般的にはほとんど知られていないのが事実です。)
メールフォームの注意書きでも、商品やサービスについてはできるだけ具体的にご教示いただけるようお願いしております。具体的でないと、その商品がどの区分に分類されるかが判断できないため、最終的な区分の数が確定できないためです。
たとえば、以下のようにご教示いただけますと、お見積りがスムーズとなります。
情報が適切な例・帽子
・Tシャツ
・ベルト
・財布
しかし、実際には以下のような例が少なくありません。
情報が不十分な例たとえば、「ネット関連のサービス」が挙げられます。
ネット関連のサービスと言っても、様々であり、多くの区分にまたがっております。
よって、より具体的な情報をいただかないと、区分を確定できないため、お見積りをお出しすることができません。
「アパレル関係」とか「ファッション関係」も同様です。
「など」があることで、どこまでを含めるのかが不明確なパターンです。
この場合、取り急ぎ「〇〇、△△、□□」を対象として商標登録をする場合のお見積りをご提示し、「より正確なお見積りのためには、「など」がどのような商品・サービスかを具体的にご教示ください」とお願いすることが多いです。
キャラクターイラストの商標登録をご希望の方に多いです。
「キャラクター商品」にも、玩具であったり、お菓子であったり、文房具であったり、様々な種類の商品が考えられます。具体的にどのような商品やサービスなのかをご教示いただかないと、区分を確定できないため、お見積りをお出しすることができません。
また、同じようなパターンで、
というのも少なくありません。
この場合、そもそも予算面から商標登録の要否を検討している段階にあって、使用する具体的な商品やサービスはまだ決まっていないということも多いようです。
しかし、上述のように、たとえそのような状況であっても、区分数を特定できなければ、具体的なお見積り額をお出しすることはできませんので、ある程度の使用が予測される商品やサービスについて、ご教示いただく必要があります。
なお、当然ではありますが、どのようなケースでも、当初より完璧なお見積りをご提示するのは難しい面もございます。
正式なご依頼をいただいた後、依頼人とのご相談やヒアリングを行なった結果、商標登録の対象とすべき商品やサービスが変わることもありますし、その影響で区分の数も増減することがあるからです。
しかし、お問い合わせ当初より、ある程度の「費用感」がわかるお見積りをご提示することは、商標専門弁理士であれば、使命であると考えております。
したがいまして、以上の点につき、何卒ご理解・ご協力をいただけますと幸いです。
もちろん、あえてのご希望であれば、ざっくりしたお見積りのご提示も可能です。
まずはだいたいの予算感でOKという場合は、ご依頼時にお伝えくださいませ。
(このような場合は、ヒアリング等の後で、あらためてお見積りをご提示します。)
まとめ
以上、商標登録費用のお見積りは、
1.願書に記載する商品・サービスの区分の数で決まります。
そして、
2.具体的な商品・サービスの情報が必要です。
以上を踏まえて、ご依頼等いただけますとスムーズです。
なお、商標登録費用のお見積りは、以下よりご依頼いただけます。
※お見積りの段階で、費用が自動的に発生することはございません。
ご依頼までの流れ