特許庁が大量迷惑商標出願の審査対策を公表
(2017年6月21日)
<新着ニュース> by 永露祥生
本日(2017年6月21日)付けで、特許庁より「手続上の瑕疵のある出願の後願となる商標登録出願の審査について(お知らせ)」が公表されました。
日本商標協会からも、すでに会員宛てにこれが周知されております。
特許庁によれば、近年の特定個人及び特定企業による、手数料を支払わない大量迷惑商標登録出願への対策として、審査の運用を以下のように変更するとのことです。
したがいまして、商標登録出願を行おうとする際に、先に手続上の瑕疵のある出願が他人からなされていたとしても、ご自身の商標登録出願について、先願となる商標登録出願が却下されるのを待つ必要はありません。
私見
大量迷惑商標登録出願については、テレビや新聞などでも度々話題となっており、ご存じの方も少なくないと思います。メディアで報じられているように「他人の商標を勝手に登録出願する」というのも、もちろん迷惑な行為ではありますが、実際の商標実務においては、これによって様々な人が様々な不利益を受けているのが現状です。
今回は審査における対策として、上記運用に変更されることが公表されました。
すなわち、「(4条1項11号の)拒絶理由を通知する場合においては、拒絶理由となる先願が手続上の瑕疵のある出願に該当し、当該先願となる出願の却下を確認次第、登録査定を行う旨を、拒絶理由通知に明示的に記載する」ということです。
ということは、他に引例や拒絶理由がない場合には、拒絶理由通知は一応届くものの、何も対応せずに待っていれば良いということになりそうです。もし、何かの間違いでU氏やB社が出願手数料を支払った場合に、後願の出願人に対して意見書提出機会が再度与えられるのかといった点が気になるところですが、このあたりはおそらく特許庁側が出願人の不利益にならないよう配慮するものと思われます。
結局のところ、後願が登録できるまでの時間としては変わらないようにも思いますが、概ね登録できそうかどうかという点をより早く知ることができるという点で、今回の運用変更は出願人(代理人)にとって有意義になるかと思います。
なお、もしこのような迷惑商標出願が引用されて拒絶理由通知が届いた場合には、間違ってもその相手方にコンタクトを取ることは控えてください。これは自己の弱みをわざわざ相手方に申告するようなもので、おそらくは譲渡対価等を求める絶好のカモにされてしまいます。
相手方は大量の商標出願をしていますので、どの後願がどの商標の存在を理由として拒絶理由通知を受けているかまでは把握していないと思われます。よって、黙っていれば、相手方にその事実を知られることもおそらくないため、相手方は結局手数料を支払わず、そのうち出願却下となるはずです。