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仙北市が熊のイラストを無断利用(2017年6月1日)

<新着ニュース> by 永露祥生

報道によれば、熊を原因とする死亡事故が起きた秋田県仙北市が注意を呼びかけるために作成したチラシにおいて、他人が商標登録している「熊出没注意」のイラストが無許可で使われていたことが発覚した、とのことです。

仙北市は、このチラシを200枚印刷しており、5月29日に仙北署から指摘を受けて把握したとのこと。今後は、イラスト画像を差し替えてチラシを配布するそうです。また、市総合防災課によれば、「職員がインターネットで検索し、目についた画像をうっかり使ってしまった。申し訳ない」と話しているとのことです。

私見

本件は、あきらかに市職員の知財リスクに関する認識不足が原因だと思います。

たしかに、最近では写真やイラストを無料かつ無許可で商用利用OKとしている親切なサイトも多く見られます。また、口コミや宣伝にもなるため、SNSでの画像利用を一部OKとしている企業やサイトもあり、知財に詳しくない人にとっては、どこまでがOKで何がNGなのかという線引きがわかりにくいといった一面があるのも否めません。

しかし、知的創作物と言えるイラストには通常何らかの権利が発生しているのが普通です。「ビジネスでの無断利用は、原則としてできない」ということを、知財知識の初歩の初歩として、世の中的に周知徹底させることが大事ではないかと思います。

ところで、報道では「熊出没注意」のイラストが商標登録されている点が問題であるかのように書かれていますが、本件はどちらかといえば、著作権の問題でしょう
チラシの画像を確認したところ、本件熊のイラストと「熊出没注意」の文字は、商品やサービスの出所識別標識としてチラシに用いられているわけではなく、商標的使用に当たらないと考えられるからです(なお、商標登録されている商標と、実際にチラシに利用された形態は微妙に異なっているようです)。道義上の問題はあるでしょうが、これが実質的な商標権侵害になるかといえば、現在の実務運用の下では、ならないでしょう。むしろ、美術の著作物になる熊のイラストに生じた複製権侵害が問題となるでしょう(※本件熊のイラストの著作物性や著作権の帰属先については、本コラムでは考慮しません)。

イラストの保有者である企業も、利用目的が公益性の高いものであることから、もし、市がキチンと利用許諾を求めれば、快く許可したのではないでしょうか。

<熊のイラスト+「熊出没注意」の登録商標の一例>

 登録第4359807号
 商標:熊出没注意の登録商標
 権利者:有限会社クリエイティブコンパス
 指定商品:第16類「紙類,印刷物,文房具類(「昆虫採集用具」を除く。)」