商標審査基準の改訂(改訂第13版)①
(2017年3月29日)
<新着ニュース> by 永露祥生
平成29年3月28日、経済産業省のウェブサイトにて、『「商標審査基準」を2年計画で大幅に見直しました』という告知が掲載されました。
同日、特許庁のウェブサイトにおいても、改訂後の商標審査基準が公表されています。(「商標審査基準」〔改訂第13版〕)
ここ数年は、毎年3月の月末になると商標審査基準の改訂が公表されており、われわれ実務家にとってはお馴染みのイベントとなりつつありますが、今年はどのような点が改訂されたのでしょうか。
第13版改訂のポイント
経済産業省のウェブサイトによれば、今回の改訂は、「① 内容面の観点からは、各条項における用語の定義及び解説並びに事例を追加」、「② 構成面の観点からは、各項目に係る見出しの追加、用語の統一等」を行なったとのことであり、全体に渡っての見直しがされた模様です。
改訂のポイントは、以下のように説明されています。
(2)公序良俗違反について、裁判例を参考に、本号に該当する場合についての類型及び該当例を明記(商標法第4条第1項第7号)。
(3)他人の氏名又は名称等について、裁判例を参考に、本号に該当する「他人」の範囲、著名性の判断基準等を明記(商標法第4条第1項第8号)。
(4)類否判断(外観・称呼・観念の類否、商品・役務の類否、結合商標の類否、取引の実情の考慮)について、基本的な考え方を記載し、外観、称呼、観念の各要素の判断基準を明確にすると共に、例示の追加、見直し。
また、出願人と引用商標権者に支配関係があり、かつ、引用商標権者が出願に係る商標が登録を受けることについて了承している場合は、本号に該当しない取扱いを明記(商標法第4条第1項第11号)。
(5)他人の周知商標(商標法第4条第1項第10号)、商品又は役務の出所の混同(商標法第4条第1項第15号)、他人の周知商標と同一又は類似で不正の目的をもって使用をする商標(商標法第4条第1項第19号)について、基準の趣旨を明確にするなど構成面からの見直し。
(6)商標権管理の利便性向上のため、同一人が同一の商標について出願した場合に、当該出願の指定商品又は指定役務全てが、先願(又は先登録)に係る指定商品又は指定役務と同一の出願をした場合に限り、「商標法第3条の趣旨に反する」との拒絶の理由を通知する取扱いを明記。
基本的には、従来の基準や運用をより明確化したものと考えられます。ただし、(2)や(4)の後段、(6)などは実務に与える影響が特に大きいと考えられるため、商標の実務担当者は変更点をしっかりと押さえておくことが必要でしょう。
改訂第13版の適用は、平成29年4月1日からの審査で適用されます。
改訂部分の詳細について
当事務所では、昨年と同様に、今後本コラムにて改訂ポイントの詳細を見ていきたいと思います。特に、(2)、(3)、(4)の後段、(6)についてピックアップし、数回に分けて考察する予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。
なお、改訂の経緯における検討事項や疑問点などは、事前実施したパブリックコメントに対する特許庁側の考え方(「商標審査基準」改訂案に対する御意見の概要及び御意見に対する考え方について)が参考になります。