商標出願の早期審査・早期審理の対象案件が拡大
(2017年2月6日)
<新着ニュース> by 永露祥生
商標登録出願の早期審査・早期審理の対象案件が拡大される旨の告知が、本日(平成29年2月6日)付で、経済産業省のホームページに掲載されました。
(http://www.meti.go.jp/press/2016/02/20170206001/20170206001.html)
唐突な印象ですが、拡大した対象案件の受付は、「本日より開始」とのことです。
追加された対象案件
これまでに商標登録出願について早期審査・早期審理が認められる場合というのは、「1.出願人又はライセンシーが、出願商標を指定商品・指定役務に使用している又は使用の準備を相当程度進めていて、かつ、権利化について緊急性を要する出願」、また、「2.出願人又はライセンシーが、出願商標を既に使用している商品・役務又は使用の準備を相当程度進めている商品・役務のみを指定している出願」に限られていました。
今回、これらに(1)マドリッド協定議定書に基づく国際登録の基礎出願、(2)「商標法施行規則別表」や「類似商品・役務審査基準」等に掲載されている商品・役務のみを指定している出願、が新たに追加されたとのことです。
マドリッド協定議定書に基づく国際登録の基礎出願
いわゆるマドプロの基礎出願とするものについて、「マドプロ出願済」でないものであっても、早期審査・早期審理の対象とされるとのことです。
実務上、マドプロ出願をする際には、すでに基礎登録が存在していることが望ましいのは言うまでもないでしょう。しかし、海外での商標登録を急ぐ場合などは、日本の未登録の商標登録出願を基礎出願とすることも少なくありません。この場合、ある程度マドプロ出願を進めた上で、この基礎出願が拒絶になってしまうと、その後の影響(損失や手間)が甚大ではないことから、早期に登録の可否を知りたいというニーズがありました。
今回の追加は、このようなニーズに応えてくれるものであり、出願人にとっても、我々代理人にとっても、その恩恵は非常に大きいと言えそうです。
なお、早期審査・早期審理の対象となるためには、「指定した商品・役務のうち少なくとも一つの商品・役務に出願商標を使用している又は使用の準備を相当程度進めている」必要があるという要件は、依然として満たすことが必要である点にはご注意ください。
「例示掲載商品・役務」のみを指定している出願
「商標法施行規則別表」、「類似商品・役務審査基準」又は「商品・サービス国際分類表(ニース分類)」において例示として掲載されている商品・役務のみを指定している出願についても、早期審査・早期審理の対象とされるとのことです。
指定商品・指定役務の表示について無駄な補正指令を回避するために、このような「例示掲載商品・役務」のみを願書に記載している出願人や代理人も少なくないと思います。そのようなケースでは、今回の追加はかなり大きな恩恵があると言えるでしょう。
なお、こちらも早期審査・早期審理の対象となるためには、「指定した商品・役務のうち少なくとも一つの商品・役務に出願商標を使用している又は使用の準備を相当程度進めている」必要があるという要件を満たさなければなりません。
商標によっては、識別力欠如や品質誤認の拒絶理由を回避するために、指定商品や指定役務の表示を限定して出願することもあるかと思います。また、権利範囲を明確にするために、いわゆる積極表示をすることもあるでしょう。このような場合は、「例示掲載商品・役務」のみを指定しているとは言えない場合が多いと考えられますので、従来からの「既に使用している商品・役務又は使用の準備を相当程度進めている商品・役務のみを指定している出願」等として、早期審査や早期審理の適用を受ける必要がありそうです。
その他の注意点
従来からのおさらいになりますが、早期審査の対象は、出願商標と使用商標が同一の態様であるものに限られる点に注意が必要です。実務上、かなり厳しく判断されている印象を受けます。ローマ文字の大文字と小文字の違いがある場合などは、同一性は認められないようです。一方、明朝体とゴシック体、縦書きと横書きの違いであれば、外観上同視できるものとして同一性が認められるとのことです。
また、新しいタイプの商標(動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標及び位置商標)については、当面は早期審査の対象外とのことですのでご注意下さい。