徳川家紋の商標登録に異議申立て
(2016年11月7日)
<新着ニュース> by 永露祥生
水戸徳川家の家紋によく似た商標が、イベント会社に商標登録されたため、水戸徳川家15代当主が理事長を務める公益財団法人がこれに異議申立てをしたというニュースが話題になっています。
調べてみたところ、おそらく以下の登録商標のことでしょう。
指定商品・指定役務は、第21類「お守り,御札,護符」、第33類「日本酒」、第41類「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,大神楽の上演,放送番組の制作,音響用又は映像用のスタジオの提供,娯楽施設の提供,興行場の座席の手配,楽器の貸与」です。
話題になったのは最近のようですが、異議申立てがされたのは今年の3月11日ということで、すでに半年以上経っています。ですので、そろそろ何らかの結論が出てもおかしくないように思います。ちなみに、現時点でJ-PlatPatで検索できる限りでは、取消理由通知が出された形跡はありません。
原則的なところから言うと、商標法には「家紋は商標登録できない」といった拒絶理由はありません。実際、家紋の商標はたくさん登録されています。
問題なのは、これが有名な徳川の家紋である点と、(真相はよくわかりませんが)徳川家とは無関係と思われる第三者が登録してしまっているという点でしょう。
また、併せて考慮すべきは、異議申立人である公益財団法人徳川ミュージアムも家紋については商標登録を行なっている点、探してみると、実はその他の会社によっても、このような徳川家紋と思われる商標(及びこれを一部に含む商標)について登録がなされている事実があるという点です。
異議申立人、その代理人はさすがに気付いていると思いますが、今回話題となった商標を登録した会社は、7年前にも同じような家紋を商標登録しているようです。(こちらに異議申立てや無効審判がかけられたという形跡は今のところありません。)
今回の異議申立てですが、これだけ話題になってしまうと、さすがに特許庁的には何とか取消しの方向に持っていきたいと考えるような気がします。有名家紋を「歴史上の人物名の商標」と同様に考えて、伝家の宝刀である4条1項7号という手もありますが、他の多くの登録商標が存在していることを考慮すると、4条1項15号あたりでまとめておいた方が、後々の混乱はないように私は思います。
ちなみに、公益財団法人徳川ミュージアム自身も家紋について商標出願をしておりますので、おそらくは今回のイベント会社の登録が引例として拒絶理由通知が来たため、異議申立てを行なったというのが経緯なのではないかと予想します。
最近話題となる商標ニュースは、若干ネガティブな印象のものが多いような気がしますが、一般の方々に興味関心を持ってもらうという意味では、良い傾向だと思います。