新しいタイプの商標その後(2016年8月9日)
<新着コラム> by 永露祥生
昨年(2015年)4月1日より出願受付が開始された「新しいタイプの商標」(音、動き、ホログラム、位置、色彩のみの商標)ですが、最近はあまり話題に上がっていない印象を受けます。一時期はマスコミも大きく取り上げていましたが、その後どうなっているのでしょうか。
特許庁の「特許行政年次報告書2016年版」によれば、2016年3月末までに出願された新しいタイプの商標は、1282件だったそうです。その内訳は、音414件、動き89件、ホログラム15件、位置288件、色彩のみ476件ということです。音の商標と色彩のみの商標への注目が特に高かったことがわかりますね。
そして登録状況ですが、2016年3月末までに60件の登録が認められ、その内訳は、音29件、動き25件、ホログラム1件、位置5件、色彩のみ0件と公表されています。動き商標以外はいずれも登録率がかなり低く、色彩のみの商標については1件もない状況です。登録困難性は制度導入以前から予想していましたが、個人的にも、ここまで低かったのは意外でした。
では、最近はどうなっているのでしょうか。J-PlatPatで調査したところ、2016年8月9日現在、新しいタイプの商標の登録数は、音43件、動き42件、ホログラム2件、位置9件、色彩のみ0件を確認できました。タイプ別の比率としては3月の時点とほぼ同じですが、色彩のみの商標はいまだに1件も認められていないようです。位置商標も、かなり厳しい登録状況と言えるでしょう。
ちなみに、音の商標の登録は43件ありましたが、いずれも歌詞や言語要素が含まれているものであり、純粋に「音だけ」のものはないようです。
このように見てくると、新しいタイプの商標の制度導入が、劇的に商標保護に貢献しているとは今のところ言い難いように思います。特許庁の審査も大変だとは思いますが、「蓋を開けてみれば企画倒れな制度」などと言われてしまわないように、今後一層良い方向に向かうことを願うばかりです。
余談ですが、前述の「特許行政年次報告書2016年版」によれば、昨年の商標登録出願件数は、前年比18.4%増の14万7283件だったそうです。2014年と比較すると、約2万件の増加とのことで、新しいタイプの商標出願件数や、例のU氏&B社の出願件数を考慮しても、全体としては増加したと言えそうです。厳しい経済状況が続きますが、良い傾向ですね!!